花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」
凛とした「茅の輪」で厄払い。花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」 Vol.1 / June 24, 2021
四季折々に迎える歳時記を、京都の花屋『みたて』が植物を通して表現。一つの作品を通して、京都ならではの生活が見えてきます。
凛とした「茅の輪」で厄払い。
〈みたて〉は花屋ではあるけれど、ただ植物だけを売るのではない。京都の日日の暮らしに漂う空気をすっと掬い、植物に添えてまとめる。木箱に川床を映し、藁と草花で芽吹きを表すといったアレンジを見れば、鴨川や東山、寺社、町並み、伝統行事といった景色が目の前に広がる。さりげなく京や季節を伝え見せてくれるのだ。
6月30日は夏越の祓。京都の多くの神社に用意される茅の輪をくぐることで、半年の厄を払い残り半年の無病息災を願う。かつてスサノオノミコトが旅の途中で世話になった蘇民将来への礼として、茅萱で輪を作り腰に着ければ災難から免れると伝え、その教えに従った蘇民将来一族は疫病から逃れることができたという故事に基づく行事だ。
神社では2mを超える茅の輪も、〈みたて〉ではスサノオノミコトが腰に着けたという伝えからイメージし、直径15㎝ほどの大きさで作り上げた。葉先や根元は巻き込んで完全な円にせず、あえて残すことで夏の植物の力強さを感じさせる仕立て。水をくぐらせ古材と組み合わせて飾れば、茅萱の緑の鮮やかさも際立つ。厄払いの気持ちを込め、目線よりも高い場所に飾りたい。
茅の輪が彩る空間で味わいたいのは水無月。暑気払いの氷を表す三角のういろうに、邪気を払う小豆を載せた、夏越の祓に欠かせない和菓子だ。
暑い暑い京都の夏もまもなく本番。茅の輪を愛でて厄を払いたい夏至の頃だ。
photo : Kunihiro Fukumori edit & text : Mako Yamato
*『アンドプレミアム』2015年7月号より。
花屋 みたて
和花と花器を扱い、四季の切り取り方を提案する京都・紫竹の花屋。西山隼人・美華夫妻がすべてを分担し営む。