夭折した髙橋大雅さんの想いを伝える、『T.T』の静謐な庭。ひみつの坪庭コレクション vol.03February 02, 2024

京都の店々に密やかに備わる坪庭は、この街に暮らす人々の美意識を象徴するような場所。京都に出かけたら見に行きたい、小さくも美しい庭を紹介します。

　夭折したデザイナーにして現代美術家の髙橋大雅さんが遺した、総合芸術空間『T.T』。伝統的な祇園の街並みに溶け込む表構えから一転し、中には髙橋さんの美意識が満ちるミニマルな世界が広がる。その先に存在するのが枯山水の坪庭だ。
「髙橋がものづくりの指針としたのは、過去の遺物を現代に蘇らせ、未来の考古物を発掘すること。空間もまた茶の湯の精神を尊重し、伝統を重んじつつ現代に合うものをと」とは、創業当初から髙橋さんと歩みを共にし、遺志を受け継ぎ発信を続けるスタッフの皆さんの話。室内と外との繋がりを意識させるため、床を延ばし境界線を曖昧に。敷き詰められた庵治石と苔の上で石彫刻が存在感を放つ。イサム・ノグチの彫刻を支え続けた石彫家・和泉正敏が、長く手元に置き続けた作品である。「当初、自身の彫刻を置いて庭を完成させるつもりでした。ところが和泉さんの作品に惹かれ、ふたりが意気投合したことから譲られることに」
　美を追求し続けたふたりの感性が融合する場だ。

photo : Yoshiko Watanabe illustration : Junichi Koka edit & text : Mako Yamato