Good for Me. 編集部が出合ったベターライフ。

カメラマンの小野田陽一さんに聞いた、25歳の僕に読んでほしい本。『自分の仕事をつくる』November 19, 2024

編集部員が見つけた「ベターライフ=より良き日々」に役立つモノやコトを紹介する連載が始まりました。ファッションや日用品、おいしいおやつ、旅先で見つけたもの…など、リレー形式でお届けしていきます。

カメラマンの小野田陽一さんに聞いた、25歳の僕に読んでほしい本。『自分の仕事をつくる』

働きながらでも本を読むために。

今年の春に新卒としてマガジンハウスに入社して、約半年が過ぎました。編集者たるもの本は読まねば!と、5月頃までは早めに出社して読書の時間を取ったりしていたのですが、いつの間にかその習慣は無くなり、目の前の仕事で頭がいっぱいに。家には買ったまま”積読”になる本が増える一方です。

それならいっそのこと、読書を仕事の一部にすれば良いのでは?と、新しく始まったこの連載では「本を読む」をテーマにしようと決めました。しかし、今の自分が本当に読むべき一冊ってなんでしょう。現代には話題作が多すぎます。そんなとき、編集部の先輩が「若い頃、当時の視座で読んだからこそ多くのものを得られた本がある」と話していたことを思い出しました。編集者という仕事柄、取材などで様々な業種の先輩に出会う機会があります。せっかくなので、そこで知り合った方に「今の自分に読んでほしい本はありますか」と聞いてみるのはどうでしょう。僕は大学にのんびり通っていたので、社会人1年目ですが現在25歳。最近、中高の同級生が結婚しました。このままでいいのか、最近なんだか焦ります。人生の先輩が教えてくれる本には、明日を生きるためのヒントがきっとあるはず。

ということで、まず話を伺ったのは、先日撮影でご一緒したカメラマンの小野田陽一さん。本誌をはじめ、数多くの広告・メディアで写真や映像の撮影を行い、神奈川・三崎でアートギャラリー『gallery nagu』の運営もされています。その日がはじめましてだったにも関わらず、快く教えてくださったのが、西村佳哲『自分のしごとをつくる』(ちくま文庫)。

「僕が25歳だった17年前は、まだカメラマンとして独立していなくて写真スタジオに所属していました。毎日地下のスタジオにこもる日々で、学生時代に持っていた自信は通用せず、それまでの価値観が一度まっさらに。そんな時期に出合ったのがこの本。いろんな人の働き方が紹介されていて、自分の本当にやりたいことってなんだろうと思ったときに読み返す一冊です」

自分の本当にやりたいこと。その場でパッと思い浮かばなかったことに不安を覚えた僕は、早速帰りの電車内でkindle版を購入して読み始めました。

カメラマンの小野田陽一さんに聞いた、25歳の僕に読んでほしい本。『自分の仕事をつくる』
11月20日に発売される本誌特集『カフェと音楽』のオリジナルムービー撮影にて。近日公開予定です!
カメラマンの小野田陽一さんに聞いた、25歳の僕に読んでほしい本。『自分の仕事をつくる』
撮影でお邪魔したお店にも、偶然『自分の仕事をつくる』を発見。

「いい仕事」はどこから生まれるのか。

2003年に〈晶文社〉から刊行された『自分の仕事をつくる』。著者は、デザインレーベル〈リビングワールド〉の代表で、プランニング・ディレクターの西村佳哲さん。働き方研究家として、仕事を通じてライフスタイルについて考える本を多数出版しています。本書は、アートディレクターの八木保さんや柳宗理さんなどの仕事場を訪ね、「いい仕事」を生み出すための働き方を考える一冊。リモートワークといった概念が登場したり、物質的な豊かさが飽和した時代に何を作るのかといった話が出てきたりと、11年前に書かれた本とは思えないほど現在に共通する問題が登場し、テクノロジーは発展していても、働くことに対する考え方はあまり変わっていないんだなと感じました。また、先月アンドプレミアムの取材で訪れた栃木・益子の『スターネット』を立ち上げた馬場浩史さんが登場していたり、先週たまたま立ち寄った東京・富ヶ谷のベーカリーショップ『ルヴァン』の創業者である甲田幹夫さんも出てきたりして、「いい仕事」は残り続けることも実感。書内に登場する人々が共通して語っていたのは、自分の感覚を突き詰めることの重要性でした。八木さんは色を選ぶときに色見本を使わずに外で拾ったものから探し、柳さんは図面を引かずに手を動かして模型を作るのが大事だと言います。個人的に良いと思うことを追求した結果、多くの人の共感につながっていく。

僕自身、目の前の仕事で頭が一杯になっていたと冒頭で書いていましたが、周りからお願いされた仕事をただやるのではなく、そのとき自分が本当に良いと思うことをひとつずつ誠実に取り組んでいこうと勇気づけられました。一方で、2009年に〈ちくま文庫〉から発売された文庫版のあとがきでは、仕事を通して他者と関わることについても言及されています。小野田さんも、25歳を振り返ったとき「今思うと、自分の価値観をリセットできたおかげで、周りとのバランスの良い関わり方を見つけられた気がします」と話していました。その答えのヒントは、西村さんの次の著書『自分をいかして生きる』にありそう。本を通して人と関わる、ほぼ自分のために始めたこの連載。どれだけ続くかわかりませんが、誰かの共感につながるような内容を目指したいです。

Book Information『自分の仕事をつくる』

カメラマンの小野田陽一さんに聞いた、25歳の僕に読んでほしい本。『自分の仕事をつくる』

著者:西村佳哲
定価:¥836
発行:ちくま文庫


編集部員によるリレー連載「Good for Me. 編集部が出合ったベターライフ」がスタートしました。ファッションや日用品、おいしいおやつ、旅先で見つけたもの…など、時には極めて私的な視点でお届けする編集部員のオススメはこちらから。


Editor 出口晴臣

『&Premium』編集部。本誌とデジタルを担当。HIPHOP、サウナ、カレーが好きです。最近興味があるのは、登山、多肉植物、自転車。

Pick Up 注目の記事

Latest Issue 最新号

Latest Issuepremium No. 133カフェと音楽。2024.11.20 — 960円