MUSIC 心地よい音楽を。

DJ、音楽プロデューサー松浦俊夫さんが選ぶ土曜の朝と日曜の夜の音楽。vol.4October 24, 2025

October.17 – October.23, 2025

Saturday Morning

プロデューサー、シンガーermhoiさんが選ぶ土曜の朝と日曜の夜の音楽。vol.4
Title.
Yek
Artist.
Oren Ambarchi / Johan Berthling / Andreas Werliin
休日の朝、郊外へ向かう道を車で走る。
夜明け前の光が、静かな街を淡く染めていく。
秋は都会よりも一歩早く深まり、
オリーブグリーンと琥珀色が窓の外をすり抜けていく。

カーステレオからは、軽やかなミニマル・グルーヴ。
ベースが回転するようにリズムを刻み、
ギターは金属の弦が軽やかに跳ね、北アフリカの風のような気配をまといながら、
陽光を反射するような透明な響きで空気を満たしていく。
パーカッションは朝露のようにきらめきを添え、
音と風景がゆるやかに溶け合っていく。

ストックホルムのセッションで生まれたこの音は、
早朝の静けさのように張りつめながら、どこか優しい。
もしこの響きに心を奪われたなら、
シリーズの他の作品にも耳を傾けてほしい。
とくに一作目『Ghosted』の “III” は、
静と動が呼吸し合い、音の彼方に新しい朝が生まれる。

アルバム『Ghosted III』収録。

Sunday Night

プロデューサー、シンガーermhoiさんが選ぶ土曜の朝と日曜の夜の音楽。vol.2
Title.
Azimuth
Artist.
Azimuth
深い夜の静けさの中、遠くで星がひとつ、またひとつと瞬いている。
空気は凍るほどに澄み、音は細い糸のように漂う。
テイラーの鍵盤がアルペジオの粒をこぼし、反復するモチーフがゆっくりと形を変えながら、時間そのものの呼吸を描き出していく。

その上をウィンストンの声とウィーラーの管が寄り添い、離れ、また交わる。

ひとつの旋律ではなく響きと響きがたゆたう光のように重なり合い、
言葉は意味を離れ、ただ音として宙を舞う。
反復が揺らぎを生み、揺らぎが静寂を深めていく。
週末の終わりに訪れる“余白”と共鳴しながら、
音は夜の時間を緩やかに解き放っていく。

気がつくと、僕はここではない何処かにいた。

アルバム『Azimuth』収録。


DJ、音楽プロデューサー 松浦俊夫

松浦俊夫
1990年、United Future Organization (U.F.O.)を結成。5作のフルアルバムを世界32ヶ国で発表し高い評価を得る。02年のソロ転向後も国内外のクラブやフェスティバルでDJとして活躍。またイベントのプロデュースやホテル、インターナショナル・ブランド、星付き飲食店など、高感度なライフスタイル・スポットの音楽監修を手掛ける。13年、現在進行形のジャズを発信するプロジェクトHEXを始動させ、〈Blue Note Records〉からアルバム『HEX』をリリース。18年、イギリスの若手ミュージシャンらをフィーチャーした新プロジェクト、TOSHIO MATSUURA GROUPのアルバムをワールドワイドリリース。24年、同作品がイギリスの〈Brownswood Recordings〉よりアナログにて再リリース。「TOKYO MOON」(interfm 金曜 23:00) 好評オンエア中。

instagram.com/toshiomatsuura

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