MUSIC 心地よい音楽を。
音楽家、音楽プロデューサー 冨田ラボ・冨田恵一さんが選ぶ土曜の朝と日曜の夜の音楽。vol.3June 20, 2025
June.20 – June.26, 2025
Saturday Morning

2000年生まれのドラマー、SSWのポップ作品。バークリー音楽大学で学んだのち、超絶技巧奏者を多数生み出したことでも知られるアヴィシャイ・コーエンのグループに参加、そこではテクニカルなドラミングを聴かせた。しかしロニはドラマーとして各所で活躍しながら、2023年からポップ作品もリリースし始める。これらポップ作品がすべて素晴らしいのだ。ジャズ界隈を中心に活躍するドラマーが制作しているとは思えないほど、ポップの真髄を捉えている。
作編曲、音色のセレクト、全体の質感などはどう聴いてもリアルタイムのポップソング——しかも少し先鋭的なインディー寄りの、音楽好きが高揚するそれ——である。そこにはロニならではの個性と若いエネルギーがあり、同時に、年齢からは考えられないほどの熟練も感じられる。エレクトロを主軸にしたサウンドメイクだが、本人の演奏による生ドラムがリズムの核となり、音楽を有機的に聴こえさせているところも魅力的だ。アヴィシャイのグループも離れ、今後は自身の音楽を中心に活動していくそうだから、ますます楽しみになってきた。
EP『PONI』収録。
作編曲、音色のセレクト、全体の質感などはどう聴いてもリアルタイムのポップソング——しかも少し先鋭的なインディー寄りの、音楽好きが高揚するそれ——である。そこにはロニならではの個性と若いエネルギーがあり、同時に、年齢からは考えられないほどの熟練も感じられる。エレクトロを主軸にしたサウンドメイクだが、本人の演奏による生ドラムがリズムの核となり、音楽を有機的に聴こえさせているところも魅力的だ。アヴィシャイのグループも離れ、今後は自身の音楽を中心に活動していくそうだから、ますます楽しみになってきた。
EP『PONI』収録。
Sunday Night

ポップの神がいなくなってしまった。その数日前にファンクの神を失った僕たちは、続けて二人の神を見送ることになった。二人とも早世とは言えない年齢だったかも知れないが、それでも衝撃は大きく、彼らがいない世界は以前とは違う世界だ。
ブライアン・ウィルソンはビーチ・ボーイズの音楽面を一手に引き受けた天才であった。同時代ではない僕が彼の天才性に気付かされたのは’90年代になってからだが、それまではビーチ・ボーイズをオールディーズバンドと認識していた。この曲や「God Only Knows」「Wouldn't It Be Nice」などを含む名盤『Pet Sounds』でさえ、初聴時にその魅力に気づくことはなかった——こもった音質の所為も多分にあろう。しかし、何かをきっかけに聴き直したとき、音質面でのハンデを押し退けて、美しいメロディや音楽構造は僕の心に到達した。それはかなり奥深いところにまで届いたという感触がある。ブライアンの音楽には、聴き手の心をこじ開けて入り込む獰猛さと儚さが同居している。深く入り込むが、その儚さゆえ美しさは静かに全身に浸透し、リスナーの一部になっていく。そんなイメージも、ブライアンの音楽以外に対して持ったことはない。この日曜日は天才の音楽に浄化されながら眠りにつくことにしよう。RIP BW
アルバム『Pet Sounds』収録。
ブライアン・ウィルソンはビーチ・ボーイズの音楽面を一手に引き受けた天才であった。同時代ではない僕が彼の天才性に気付かされたのは’90年代になってからだが、それまではビーチ・ボーイズをオールディーズバンドと認識していた。この曲や「God Only Knows」「Wouldn't It Be Nice」などを含む名盤『Pet Sounds』でさえ、初聴時にその魅力に気づくことはなかった——こもった音質の所為も多分にあろう。しかし、何かをきっかけに聴き直したとき、音質面でのハンデを押し退けて、美しいメロディや音楽構造は僕の心に到達した。それはかなり奥深いところにまで届いたという感触がある。ブライアンの音楽には、聴き手の心をこじ開けて入り込む獰猛さと儚さが同居している。深く入り込むが、その儚さゆえ美しさは静かに全身に浸透し、リスナーの一部になっていく。そんなイメージも、ブライアンの音楽以外に対して持ったことはない。この日曜日は天才の音楽に浄化されながら眠りにつくことにしよう。RIP BW
アルバム『Pet Sounds』収録。
音楽家、音楽プロデューサー 冨田ラボ・冨田恵一

冨田ラボとして、これまでに 7 枚のオリジナルアルバムを発表。最新オリジナルアルバムは『7+』は20 名の豪華アーティストが参加。 長年に渡り冨田恵一のソロプロジェクトとして親しまれてきたが、2025年 新メンバーとして、Arche、北村蕗、Santa、 ヨウという 4 人のボーカリストが加入。新体制後初の楽曲「the birds of four」をリリース。2025 年 4 月には今年 デビュー30 周年を迎える UA をフィーチャーした新曲「あはは feat. UA」をリリース。自身初の音楽書『ナイトフライ -録音芸術の作法と鑑賞法-』は横浜国立大学の入学試験問題に採用された。オフィシャルファンサイト「冨田ラボスタジオ」では、 日々の音楽生活が豊かになるオリジナルコンテンツ情報が満載。