BOOK 本と言葉。
30代のときに、私の生き方を変えた本。『早春スケッチブック』 /東京・国分寺『早春書店』 が届けるベターライフブックス。October 16, 2025
This Week Theme30代のときに、私の生き方を変えた本。
Book of the Week『早春スケッチブック』 山田太一 著(里山社)

社会のなかでもがきながら30代を過ごしていたころ、パートナーの勧めでドラマ・脚本家・山田太一の諸作に触れるようになった。彼が脚本執筆した作品では常に、「三流大学」の学生だとか、(1970年代当時の)中流家庭の主婦だとか、それまでのテレビドラマでは顧みられなかったような人々にカメラが向けられる。戦後日本の小市民生活のなかにある切実さと、しかしそれに対する「本当にこれでいいのか?」という疑問とを同時に描くような作品世界に、強く惹き込まれた。
本書には、1983年に放送された山田の代表作のひとつ『早春スケッチブック』のシナリオが収められている。ささやかな幸せを享受する一見平凡な四人家族の前に、突然ひとりの男が現れる。彼の存在によって、家族は大きく揺さぶられ、葛藤することになる。物語の中で、登場人物たち皆それぞれが、自らの在り方を見つめ直していく。その先のラストシーンに生まれる光景は、普遍的にあらゆる時代の読者・視聴者の心を打つはずだと思う。35歳のときに始めた自分の古本屋・早春書店の店名は、このドラマから取った。
BOOKSHOP 早春書店

店主の下田裕之さんは、長年大型新刊書店で勤務したのち、国分寺駅のそばに2019年に開店。文学、音楽、サブカル、批評を織り交ぜた本を取り揃えている。テキストユニット〈TVOD〉のコメカという名前で、サブカルチャーや社会のことに関する執筆活動もしている。
住所:東京都国分寺市本町2-22-5
営業時間:12:00~20:00
定休日:月
詳細はInstagram(@so_shun_shoten)より確認を。