MUSIC 心地よい音楽を。
シンガーソングライター スカートさんが選ぶ土曜の朝と日曜の夜の音楽。vol.2December 12, 2025
December.12 – December.18, 2025
Saturday Morning
音楽の仕事というのは10時は早朝、みたいな世界（主語が大きくなりましたが、私の周りだけだと思います）なので、世間一般の「朝」というのは私にとってとても貴重なものになってしまいました。あるときは仕事をしていて、あるときはテレビを見ていて、あるときはゲームをしていて……暗い夜からだんだんと明るくなって朝になってた、みたいな状況は何度もあれど、目が覚めて、カーテン開けたらなにもかもが陽光に照らされ、なにもかもが新しく感じるような朝、というのはもうずいぶん経験していないような気がします。そんな私でも、何年に一度あるかないかですが、時々、休みの日には早朝の街を歩きたくなる衝動に駆られるのです。学生の頃、夏の日の早朝の散歩に『ペット・サウンズ』を選んだのですが、本当に気分が良く、どこまでも歩いていけそうなほどでした。「土曜日の朝」、というより「朝」の一点に賭けた形になりましたが、特にこの曲の澄んだ空気感は特別です。なによりオルガンとベースと歌ではじまる、このアレンジがとにかく好きで、ベースは低音というよりは少し高めの音域を演奏しているところがとても気持ちいいです。
アルバム『Pet Sounds』収録。
アルバム『Pet Sounds』収録。
Sunday Night
厚手の音楽、というのは存在する。それは決して低音がたくさん入っている音楽、とかでも、たくさんの音が入っていて厚みがあってリッチな響きを持った音楽、とかでもない。私にとっての厚手の音楽は、ちょっと肌寒い日には心強く、頼もしいけど、たくましいそれではない……つまりこちら（日曜の夜の方）で紹介しているような音楽です。冬になるとどうしても聴きたくなるのがフィッシュマンズの『コーデュロイズ・ムード（気分はコール天）』というEP。帯の惹句には「抱いて眠ると、あたたかい。」とあるけど、まさにそれ。肩肘張らない、リラックスした演奏といい曲、いい歌、（後々のフィッシュマンズがつくりだす世界観からすると）ただそれだけ。でもそれこそが重要。ここにあるムードというのは、冬が来るたびに必要になるのです。
EP『Corduroy's Mood（気分はコール天）』収録。
EP『Corduroy's Mood（気分はコール天）』収録。
シンガーソングライター スカート
どこか影を持ちながらも清涼感のあるソングライティングとバンドアンサンブルで職業・性別・年齢を問わず評判を集める不健康ポップバンド。2006年、澤部渡のソロプロジェクトとして多重録音によるレコーディングを中心に活動を開始。’10年、自身のレーベル〈カチュカ・サウンズ〉を立ち上げ、1stアルバム『エス・オー・エス』をリリースしたことにより活動を本格化。’21年4月にアニメ「オッドタクシー」オープニングテーマ「ODDTAXI」をPUNPEEとコラボで担当。豊富なお笑いの知識から、'23年9月には25歳以下限定のお笑い賞レース『UNDER 25 OWARAI CHAMPIONSHIP』決勝戦の審査員を担当、大会主題歌「期待と予感」も書き下ろした。また、そのソングライティングセンスからこれまで藤井隆、Kaede(Negicco)、三浦透子、adieu（上白石萌歌）などへの楽曲提供も行っている。さらにマルチプレイヤーとして澤部自身も敬愛するスピッツや川本真琴、ムーンライダーズらのライヴやレコーディングに参加。
