MUSIC 心地よい音楽を。

シンガーソングライター、映画音楽作曲家 世武裕子さんが選ぶ土曜の朝と日曜の夜の音楽。vol.4December 22, 2023

December.22 – December.28, 2023

Saturday Morning

Title.
24 Preludes, Op.28: No.8 in F-Sharp Minor
Artist.
Frederic Chopin, Aimi Kobayashi
金曜日に小林愛実さんのコンサートに伺った。実のところショパンの楽曲は私には感傷的すぎるし、雄みの強さも相まってどちらかというと苦手な部類なのだが、小林さんが演奏すると少し控えめなのに力強くもあって、世界の美しさだけを抽出したような時間が過ごせる。指を離してから次のノートに移行する、その瞬間が丁寧でとにかく美しいのだ。本当ならば、是非ともステージを観てもらいたい。音源の伝えるものには限界もあるのだが(それでも十分すぎるほど素晴らしいということを明記しておく)、毎日ステージで演奏してもらう訳にはいかないので、こうして音源を紹介するに至った。こんな人に演奏してもらえるなんて、作曲家も幸せなのではなかろうか。
アルバム『Chopin: Preludes & Piano Works』収録。

Sunday Night

Title.
Teardrop
Artist.
Massive Attack
世界(と自分が思っているもの)と距離をおいて、自分と徹底的に向き合ってみたい夜はないだろうか。そういう夜に、ふとこの曲を聴き返してみたくなった。静かで淡々としている。音楽的にはシンプルな作りだと思うが、世界の終焉に向かっているようでもあり、希望に満ちた夜明けを遂に迎えるようでもあり、その懐の深さが逆に、最も小さな状態の自分の姿を照らし出してくれるよう。普段どうでもいいような事にまで考えを巡らせ、思考フル回転気味な私だが、こうして瞑想のような時間を与えてくれるのが音楽という存在なのだなと、この連載を通して改めて気付かされた。
アルバム『Mezzanine』収録。

&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

音楽好きの“選曲家”たちが月替わりで登場し、土曜の朝と日曜の夜に聴きたい曲を毎週それぞれ1曲ずつセレクトする人気連載をまとめた「&Music」シリーズの第2弾。 23人の選曲家が選んだ、週末を心地よく過ごすための音楽、全200曲。 本書のためだけにまとめた、収録作品のディスクガイド付き。

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シンガーソングライター、映画音楽作曲家 世武裕子

東京都葛飾区生まれ、広島在住。 Ecole Normale de Musique de Paris 映画音楽作曲学科を首席で卒業。在仏中には、Acte 1やCours Florent といった俳優学校で映画演技も学んだ。パリ、東京にて短編映画制作に携わったのち、『家族X』(吉田光希監督)で長編デビュー。2024年1月12日全国公開予定『カラオケ行こ!』(山下敦弘監督)、5月公開予定『湖の女たち』(大森立嗣監督)、Prime Videoにて配信中のアニメシリーズ『ミギとダリ』、『日日是好日』(大森立嗣監督)『星の子』(大森立嗣)『Arcアーク』(石川慶監督)『空白』(吉田恵輔監督)など毎年数多くのサウンドトラックを手がけている。その他のソロワーク:『WONDERLAND』『L/GB』『Raw Scaramanga』(エレクトロバンド3部作)『あなたの生きている世界』(弾き語りアルバム) ピアノ演奏・編曲・プロデュース参加:森山直太朗、Mr.Children、いきものがかり、HIROBA など。

sebuhiroko.com

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