MUSIC 心地よい音楽を。
土曜の朝と日曜の夜の音楽。 今月の選曲家/ピーター・バラカン vol.2August 12, 2022
August.12 – August.18, 2022
Saturday Morning

ぼくの人生に深い影響を及ぼすことになったニュー・オーリンズの音楽を意識するきっかけとなったのはこの曲が収められたアルバム「ガンボ」でした。ちょうど50年前の1972年、放送が始まって間もない新しいラジオ番組で、このイントロの転がってゆくように弾むオルガンの音を聞いた途端に虜となったこのサウンドはもうぼくのDNAの一部となっています。特別な世界への扉を開いてくれたドクター・ジョン、また彼の曲を積極的に電波に乗せたDJのチャーリー・ギレット、二人ともあの世に行ってしまいましたが、今も恩人のように思っています。
アルバム『Gumbo』収録。
アルバム『Gumbo』収録。
Sunday Night

ぼくにとって夏の定番曲です。特にこの東京のじめじめした真夏の夜にぴったりの雰囲気で、海の側で開催されるイヴェントで毎回かけています。クルセイダーズの有名な曲をカヴァーしているのがジャマイカのラスタ集団、カウント・オシーという打楽器奏者がリーダーでしたが、サウンドの要は非常にアフリカ的な響きの深味のある太鼓です。ゆったりとしたビートに乗って軽やかに歌い上げるテナー・サックスのメロディは実に気持ちよく、聞くたびに恍惚を味わいます。またタイトルも帰省する時期によく合ったもので、一種のカリブ風盆踊りのような曲だと思っています。
アルバム『Grounation』収録。
アルバム『Grounation』収録。
ブロードキャスター ピーター・バラカン

1951年ロンドン生まれ。ロンドン大学日本語学科を卒業後、1974年に音楽出版社の著作権業務に就くため来日。現在フリーのブロードキャスターとして活動、「バラカン・ビート」(インターFM)、「ウィークエンド・サンシャイン」(NHK-FM)、「ライフスタイル・ミュージアム」(東京FM)、「Going Back - 音楽と世界」(らふくしまFM)、「ジャパノロジー・プラス」(NHK BS1)などを担当。著書に『ピーター・バラカン式英語発音ルール』(駒草出版)、『Taking Stock どうしても手放せない21世紀の愛聴盤』(駒草出版)、『ロックの英詞を読む〜世界を変える歌』(集英社インターナショナル)、『わが青春のサウンドトラック』(光文社文庫)、『ピーター・バラカン音楽日記』(集英社インターナショナル)、『魂(ソウル)のゆくえ』(アルテスパブリッシング)、『ラジオのこちら側』(岩波新書、電子書籍だけ)、『ぼくが愛するロック 名盤240』(講談社+α文庫、電子書籍だけ)などがある。2014年から小規模の都市型音楽フェスティヴァル「Live Magic」のキュレイターを務める。