MUSIC 心地よい音楽を。
今月の選曲家 大森克己February 24, 2017
February.24 – March.03, 2017
Saturday Morning

20歳をほんの少し過ぎたばかりのブラームスが1854年に書いたピアノ三重奏曲が生々しい新鮮な光を放っている。自分の師の妻に恋してしまった「感じまくっている若い男」がここにいる。抑制することの出来ない何かが溢れていて、それはややもすると鬱陶しい混沌としか呼べないものでもあるのだが、音楽という言語を手にしていたブラームスはその混沌をギリギリのところで形にしている。その抑制できない混沌を抱えながら生き続けたブラームスは50歳を過ぎてからこの曲の冗長な部分を削除し改訂するのですが、ボクはこの初稿版の演奏がとても好きです。まだ髭の無いブラームスの肖像。
アルバム『(PianoTrio)verklarte Nacht: Trio Jean Paul +brahms: Piano Trio, 1』収録。
アルバム『(PianoTrio)verklarte Nacht: Trio Jean Paul +brahms: Piano Trio, 1』収録。
Sunday Night

音楽というものは個人が所有するものではなくて、皆と歌うものなんだな、ということがこの曲を聴くとはっきりとわかる。ハーモニーという言葉の既成概念を鮮やかに更新してくれる美しい合唱。ブルガリアの声。
アルバム『Le Mystère des Voix Bulgares』収録。
アルバム『Le Mystère des Voix Bulgares』収録。
写真家 大森 克己

1994年、第3回写真新世紀優秀賞。国内外での写真展や写真集を通じて作品を発表。近年は MEM での個展「sounds and things」(2014)「when the memory leaves you」(2015)、ギャラリー・トラックスでの個展「 #soundsandthings 」(2015)など精力的に活動を行っている。東京都写真美術館「路上から世界を変えていく」(2013)、チューリッヒの Museum Rietberg 「 GARDENS OF THE WORLD 」(2016)などのグループ展に参加。主な写真集に『サルサ・ガムテープ』(リトルモア)、『encounter』(マッチアンドカンパニー)、『サナヨラ』(愛育社)、『すべては初めて起こる』(マッチアンドカンパニー)など。「BRUTUS」 や「 SWITCH 」などの雑誌や「花椿」「雛形」などの WEB マガジンでも多くの撮影をしている。