Music

シンガーソングライター 浮 (ぶい) さんが選ぶ土曜の朝と日曜の夜の音楽。vol.2February 09, 2024

February.09 – February.15, 2024

Saturday Morning

Title.
ハイキングコース
Artist.
yukifurukawa
休日の始まりの朝。私も旅に出かけるときは土曜日から始まることが多いです。出発の朝です。今は東京を拠点としながら、毎月のように日本中のいろんな場所へ旅する生活を送っているのですが、気がつくと”忙しい人”というレッテルを貼られてしまったような気がします。確かに、たまに移動が重なると、「えっ、新幹線が…飛んだ!!?」と思ったら、乗っていたのは飛行機だったこともありました。さすがにそんな寝ぼけたことが何回もあったわけではありませんが、毎週、初めての土地や人に出会う喜びの中にも、ふと自分がどこにいるのか分からなくなってしまったり、色んな感情を言葉にすることがうまくできなくなってしまったりします。
そんな時にこの「ハイキングコース」という曲はすべてをフラットに戻してくれるような安心感があります。
3人の歌声で紡がれるこの曲の歌詞が、淡々としているようで、凄く親密な場所に焦点を当てているように感じて本当に本当に好きです。ビートが入るタイミングも絶妙で、思わずニコッとしてしまいます。
アルバム『金貨』収録。

Sunday Night

Title.
安里屋ゆんた
Artist.
おおたか静流
私はできるだけ無音じゃない方が落ち着く性格です。でも、例えば土曜にも日曜にもイベントがあって賑やかに過ごしていると、日曜の夜、家に帰った頃にはなぜか音楽が聴けなくなることがあります。拒否反応というほどではないけど、しっくりこない感じです。矛盾しているかもしれませんが、”音楽が聴けないときに聴ける音楽”というのがあります。そのひとつがこの曲です。
おおたか静流さんの『Sugar Land』というアルバムは、石垣島に3ヶ月滞在していた時によく聴きました。この3ヶ月が私の人生でかけがえのない時間となった理由は、楽しいだけじゃなかったところにあります。小さなことが積もって大きな悩みとなった時、おおたかさんの声は軽やかにしがらみを解き、天から降り注ぐように聴こえました。
石垣島では、道端に伸びている植物ひとつとってもスケールが大きく、この豊かな自然の隙間を縫って人間が住まわせてもらっているんだという感覚で過ごしていました。
おおたか静流さんのうたは、民謡は、よそ者の私にそっと共存の可能性を示してくれます。
実は石垣島から東京に戻った翌日、友人のライブを見た帰りに駅前で路上ライブをしたことがありました。そうしたらなんと、目の前におおたか静流さんが現れて一緒に安里屋ユンタを歌ってくださったのです。できることなら、もう一度だけでいいから一緒に歌いたかったです。
アルバム『Sugar Land』収録。
&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

音楽好きの“選曲家”たちが月替わりで登場し、土曜の朝と日曜の夜に聴きたい曲を毎週それぞれ1曲ずつセレクトする人気連載をまとめた「&Music」シリーズの第2弾。 23人の選曲家が選んだ、週末を心地よく過ごすための音楽、全200曲。 本書のためだけにまとめた、収録作品のディスクガイド付き。

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シンガーソングライター 浮 (ぶい)

米山ミサのソロプロジェクト。2018年頃より、ガットギターの弾き語りで活動を開始。2020年、1st Album『三度見る』をリリース。2021年、コントラバス奏者の服部将典、ドラマー藤巻鉄郎とトリオ”浮と港”を結成。同メンバーにゲストを迎え、2022年に2nd Album『あかるいくらい』を〈Sweet Dreams Press〉よりリリース。以後、全国各地を巡り歌っている。Photo : Momoka Omote

sandmiru.my.canva.site

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