BOOK 本と言葉。
本屋が届けるベターライフブックス。『さよならのあとで』ヘンリー・スコット・ホランド 著 高橋和枝 絵(夏葉社)選・文/本と音楽 紙片 / March 14, 2019
This Month Theme大切な言葉に出合える本。
閉店時間をすこし過ぎた頃、「まだだいじょうぶですか?」と急ぎ足で女性が来られた。早足で店内をまわり、レジに持ってきたのは『さよならのあとで』だった。
この本は大切な人との決別のあと、残された方へそっと寄り添い、ささやかに慈しむ小さな声の本。
いま、このひとに必要な本だったのだなと思い、通常のやり取りをし、本を手渡す。わかつことの出来ない悲しみに、僕はかける言葉を持たない。本を手渡す。
本にしかできないことがある。僕はただ、この本を手渡し、見送る。
たよりない毎日に大げさなことは起こらないけれど、この本を手渡し見送ることは、本屋にできる特別なことかもしれない。
Shihen 本と音楽 紙片
2015年、本と音楽の店を始める。誰かの心にそっと寄り添うような、ひとひらの紙切れのような場所でありたい、という願いを込めて。新しい本とCDを中心に、少しだけ古本も。ジャンルのすきまにこぼれたものを届けている。
広島県尾道市土堂2-4-9 あなごのねどこの庭の奥