BOOK 本と言葉。

『火山のふもとで』松家仁之 著(新潮社) 選・文/本屋ルヌガンガBook 124 / July 20, 2018

This Month Theme心地よい暮らしを感じる本。

火山のふもとで

建築は、生活を設計する仕事だ。光の当たり方、部屋の暖かさ、目に入る景色、漂ってくる香り、目に触れるものの手触り……。五感すべてに気を配りながら、使う人の動きを想像し、彼らが心地よく過ごせるよう、人が気づかない程度の仕上げの工夫を施す。建築事務所に入所した「ぼく」のひと夏を描く本書は、そんな、建築家の仕事ぶりと哲学をありありと伝えてくれます。端正な筆致は控えめな表情をしていますが、芯には強い哲学が根を張っています。注意深く、小さな声を聞き逃さないこと。細部にこそこだわり、同時にさりげない表情をしていること。静かに語られるそうした本書の哲学は、私たちの背筋を伸ばし、同時に柔らかな気持ちにしてくれるはずです。


lunuganga 本屋ルヌガンガ

読む前から「それが何の役に立つのか」が明らかな本ではなく、純粋にその言葉の「肌触り」を味わえるような本であると同時に、読み終わった後に世界の​風景が少し変わってしまうような本を届けている。 香川県高松市亀井町11−13中村第二ビル1F

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