MUSIC 心地よい音楽を。
バイオリニスト、アレンジャー 須原杏さんが選ぶ土曜の朝と日曜の夜の音楽。vol.1November 07, 2025
November.7 – November.13, 2025
Saturday Morning

いつもそそくさと通り過ぎてしまう秋も、今年は少し衣替えの猶予をくれたような気がする。と、言いながら10月はイベントも多く“袖の長い”服でやり過ごしてしまいました。やり過ごしていたことに気づいた頃には時すでに遅し。最低気温はグッと下がり、袖を通しそびれてしまった服を思い出し後悔(また!今年も!)。
新しい季節に少し心躍る。冬の冷たい風が、細く吹いています。理想ならザックリとしたニットを着て、訪れた寒さを歓迎しながら少し高い珈琲を淹れて、クラシックでも聴きながら土曜の朝を過ごしたいけれど。私にはまだ綿の長袖しか手元にない。悲しい。季節に乗り遅れた鬱々しい気持ちですが、のっそり手足が動きますように。のっそりと衣替えスタート。
土曜の朝の1曲に選んだのは、イスラエルのシンガー・プロデューサー、ノガ・エレズ。ライブ収録されたアルバムより『Sad Generation,Happy Picture(AATM)』を。彼女のルーズでキレキレな声、ところどころユーモアの効いたキュートで骨太なアレンジがたまらない。のっそりと、自分を鼓舞しながら動き出すのにちょうど良い曲。ノガ・エレズのオリジナルも大好きだけれど、彼女が初期からトライしているオーケストラやアコースティックにアレンジを再構築していくライブシリーズは家で聴くのにピッタリな温かさです。
アルバム『The Vandalist』収録。
Sunday Night

人がたくさんいた華やかな所から急に1人になる帰り道。ライブが多い日曜の夜によくあります。私は電車に乗る機会が多いので、イヤホンをして楽器とその日の衣装が入った荷物を抱えながら邪魔にならない、なるべく端っこのポジションを探します。今週を乗り切った安堵感とまだ収まらない高揚感の中、すぐそこに控える時間と話し合う時の音楽。
スメーツはノルウェー出身の女性デュオ。彼女らの楽曲「Max」は、歌とトラックの歪な交わり方が不思議な波を作っていてクセになります。余韻と静寂、熱狂が見え隠れ。バッハにインスピレーションを受けているのも納得です。味わいがあり、不思議と何回もおかわりしてしまいます。
アルバム『Believer』収録。
バイオリニスト、アレンジャー 須原 杏

レコーディング、ライブをメインに幅広いジャンルで活動している。 弦の多重録音やエフェクターを使ったアレンジなど意欲的に新しいストリングスサウンドの探求に取り組み、多方面のアーティストとクリエーションをともに行う。 2012年よりASA-CHANG&巡礼メンバーとして活動。‘25年くるりホールツアー2025、映画『国宝』 オーケストラリーダー、TK from 凛として時雨ツアー、JJJ(Fuji Rock Festival)、STUTS tiny desk concerts Japanなどに参加。11月より森山直太朗「弓弦葉」ツアー帯同。ASA-CHANG&巡礼「海峡2025 (唄編) 、SENAKA2025 (Dedicated to rei harakami)」10月より配信中。

























