Music

土曜の朝と日曜の夜の音楽。 今月の選曲家/武田カオリ vol.2February 14, 2020

February.14 – February.20, 2020

Saturday Morning

Title.
Fantasy Theme
Artist.
Kevin Krauter
ベッドからぬるりと這い出してぼんやりし、キッチンで特に何をするでもなく、ただただ銀色のシンクを見つめている朝。ブラジル音楽を思わせるアコースティックギターのリフレインとボーカルにかかったエフェクトが心地よく、彼が暮らすインディアナ州南部にあるブルーミントンという、見知らぬ町に思いを馳せながら、さて冷蔵庫の中には何があっただろうかと頭を働かせる前に聴きたくなる曲です。
Hoopsというバンドに在籍している彼ですが、この曲が入っているミニアルバムはソロでの2作目。アルバムごとにコンセプトを変えており2作目はよりフォーキーな内容で、昨年発売された3作目は日本のシティー・ポップからもインスパイアされた作品なのだそう。その都度、様々な音楽から受けた影響を取り込んでは消化し、惜しげもなく発表するスタイルがなんだか人間らしくもあり愛おしくもあり、ますます好きになります。
『Changes-EP』収録。

Sunday Night

Title.
Missin Out
Artist.
Brent Faiyaz
大都会のアパートメントで一人。目を閉じて横になると外からはサイレンやパーティの音が漏れ聞こえてくる夜。人恋しいような一人でいたいような、今日一日上手くいったような、いかなかったような気持ちを彼の甘いような寂しいようなボーカルが導いてくれます。完全に好みの問題ではありますが、私は魂と情熱を内に秘めた抑えた歌唱に揺さぶられるところがあります。昂ぶった時にはより大きな声で、というよりも、より抑えてかつ堪えて歌われると脳内に幸せな分泌物がブワッと出るという特殊な体質なのかもしれません。なので、元々ラッパーだったという彼には心底「歌ってくれてありがとう」という気持ちになります。ふんわりとメインの歌を包み込む、彼特有のコーラスワークを堪能するにはイヤホンで聴くのがお勧めです。ちなみに、今年発売された最新作も良作でした。
アルバム『Sonder Son』収録。



&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

音楽好きの“選曲家”たちが月替わりで登場し、土曜の朝と日曜の夜に聴きたい曲を毎週それぞれ1曲ずつセレクトする人気連載をまとめた「&Music」シリーズの第2弾。 23人の選曲家が選んだ、週末を心地よく過ごすための音楽、全200曲。 本書のためだけにまとめた、収録作品のディスクガイド付き。

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歌手 武田 カオリ

1999年にギタリスト石井マサユキとのユニットTICAを結成。2000年にカバー集『No Coast』でデビュー。以降TICAとして多数のアルバムを発表。東京スカパラダイスオーケストラのベーシスト川上つよしが率いる「川上つよしと彼のムードメーカーズ」に参加。2019年10月に Pepe California+TAKEDA KAORI名義で5曲入りMini Album『Take Me Down』をリリース。

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