台湾スイーツ食べ比べ

弾力性のある食感がたまらない伝統菓子。【台湾スイーツ食べ比べ】August 18, 2025

昔懐かしいスイーツとして親しまれている「粉粿」と「涼粉」。両者ともにサツマイモの粉と水を原料としており、言ってみれば「わらび餅に似た台湾菓子」。それ自体には味がついていないように思えてしまうが、ぷるぷるとした食感がウリとなっている。前者はかき氷のトッピングとして用いられ、クチナシの果実を使用して黄色く色づけされているのが特色。店によっては黒糖味の「粉粿」もある。後者は半透明で、これにきな粉に似た「麺茶(炒った小麦粉)」の粉をふりかけて味わう。両者ともに、作るのに想像以上の手間がかかる。そのため、現在は作り手が減ってきているという現実がある。今回は歴史ある町、萬華にあり、手作りにこだわる『春桃手作厚工甜品』と『涼粉伯』を紹介したい。
弾力性のある食感がたまらない伝統菓子。【台湾スイーツ食べ比べ】

祖母の味を受け継ぐ「手作り粉粿」の店。

萬華の路地にひっそりと佇む一軒。地元出身の元デザイナーが7年前に創業し、子どもの頃に祖母が作ってくれたというおやつの味を再現している。緑豆入りお汁粉やハトムギスープのほか、梅シロップのかき氷や、紅茶ゼリーをのせたかき氷などもある。この時季におすすめなのが、鮮やかな黄色が目を引く「粉粿冰」。早朝から仕込んだ粉粿は粘りっ気がたっぷりとあり、手でちぎっている。肝となるのが特製シロップ。店では「二砂」と呼ばれる褐色のデメララシュガーを中華鍋で炒った後、1週間ほど冷蔵庫で寝かせてから使用。シロップは上から全体にかけるのではなく、粉粿を小さく分けて、1個ずつ、つけて味わうのがベター。香りがよい濃厚なシロップの味を存分に楽しみたい。

春桃手作厚工甜品
ツンタオソウツオホウコンティエンピン

台北市萬華區永福街56號 ☎なし 13:00~18:00 月火休 写真メニューは65元。冬場は餅デザートもある。テーブル席は建物の軒下にも。

春桃手作厚工甜品 ツンタオソウツオホウコンティエンピン
弾力性のある食感がたまらない伝統菓子。【台湾スイーツ食べ比べ】

台北で唯一といわれる希少な涼粉の専門店。

創業65年。現在は2代目の辜凱鈴さんが切り盛りする。辜さんによれば、和菓子に似た涼粉は日本統治時代に誕生し、当時は「きびちゃん」と呼ばれていたという。以前は鐘を鳴らし、屋台を押して売り歩いていたが、8年前に店を構えた。ここではサツマイモ粉と水をかき混ぜたのちに冷ましてから細かくカット。さらに箱の中に入れた氷で冷やし続けるため、驚くほどもちっとした食感に仕上がっている。また、きめ細かい麺茶も自慢。これは油を使わず、モーター付きの特製回転桶を使用。弱火で炒めていく。粉が桶にくっつかないよう、棒で叩き続け、しかも飛び散らないように冷房のない部屋で作業をしている。こうした労力の結晶によって涼粉の味は守り続けられている。

涼粉伯
リャンフェンポー

台北市萬華區貴陽街二段202號 ☎なし 10:00~16:00 月休 涼粉は45元。古刹「艋舺青山宮」の近く。早めに売り切れることも。

躺平・綠豆沙牛乳專門店 タンピン・リュィトウサーニョウルーツワンメンディエン

文/片倉真理 写真/片倉佳史


台北在住ライター・コーディネーター 片倉 真理

片倉真理
1999年から台北に暮らす。台湾に関する書籍の執筆、製作のほか、雑誌のコーディネートなども手がける。台湾各地を隈なく歩き、料理やスイーツから文化、風俗、歴史まで幅広く取材。著書に『台湾探見』、共著に『台湾旅人地図帳』(共にウェッジ)、『食べる指差し会話帳』(情報センター出版局)など。

instagram.com/marikatakura

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