台湾スイーツ食べ比べ

客家式や福建式など、種類豊富な台湾のお餅。【&Taipei 台湾スイーツ食べ比べ 】January 16, 2023

「お餅デザート2」
 台湾語で「麻(蔴もぁちぃ)糬 」と呼ばれる「お餅」。発音は日本語に似ているが、そのバリエーションは日本よりも格段に豊富。当連載の4 回目で紹介した砂糖水や黒糖キャラメル水で茹でる以外に、大鍋に油を入れ、じっくり煮込んだものもある。これは中国・福建地方の伝統的な作り方であり、「燒麻」と呼ばれる。また、客家(ハッカ)の人々はお餅を「粢(ちーばー)」と呼び、蒸したもち米を竹の棒で混ぜたり、杵でついたりして粘り気を出す。これを皿にのせ、砂糖やゴマ、ピーナッツの粉をまぶし、切り分けて食べる。一方、大福のように餡を詰めてアレンジされたものもよく見かける。さらに台湾原住民族の食文化にはアワ(粟)を用いたものもある。今回は客家式と福建式のお餅を紹介したい。
お餅デザート2 <i>&Taipei 台湾スイーツ食べ比べ </i>

客家の女性が手がける手作り餅。驚きの軟らかさ。

  中山市場内の一角にブースを構える小さな店。もち米や在来米を用いた伝統食品がずらりと並ぶが、看板商品は客家スタイルのお餅。注文すると、店主の廖寶桂(リャオ・バオグェイ)さんが丁寧に一つ一つ餡を包んでくれる。餡はゴマとピーナッツ粉と小豆の3種類。小豆は屏東県萬丹のものにこだわる。ピーナッツ粉とゴマは香りのいいものを選び、外側にもたっぷりとまぶしている。廖さんはこの道45年の大ベテラン。台中郊外の客家集落、東勢の出身で、幼少の頃から母親たちが作るのを手伝っていたという。もち米を水に浸すところから始め、ふわっと真綿のような軟らかい食感に仕上げている。一度食べたら忘れられない味で、故郷を懐かしんで訪れる客家人の姿も少なくない。1 個10元という安さも魅力。

中山手工蔴糬紅豆湯
ツォンサンソウコンマーシューホントウタン

台北市中山區長安西路3 號(中山市場1F28號)☎02‒2551‒4451 7:00~17:00頃 月休 わらび餅に似た「黒糖粉粿」も人気。

中山手工麻糬紅豆湯(ツォンサンソウコンマーシューホントウタン)
お餅デザート2 <i>&Taipei 台湾スイーツ食べ比べ </i>

ラー油味も! 挑戦を続ける老舗が作る絶品の餅。

 1951年創業の甘味処。お汁粉からかき氷まで様々なデザートを楽しめるが、この店の顔となっているのは「燒麻」だ。1 代目が中国・福州出身の人から習ったという秘法を今も守っている。ヒマワリ油をたっぷりと入れた鍋の中で20分ほど煮込むお餅は照りがいい上に弾力性がある。もち米なので油は浸み込まず、さっぱりしている代わりに歯ごたえのある食感が生まれる。また、新米ではなく、1 年半ほど寝かせたもち米を使用し、火加減を上手に調整しているというのもポイント。ここではピーナッツ粉とゴマと砂糖をまぶしたものだけでなく、海苔と大豆のふりかけをのせたものや、自家製ラー油を絡めたものもある。ラー油とお餅は意外に思えるほど相性がいいので、ぜひお試しを。

雙連圓仔湯
スワンリエンユエンツァイタン

台北市大同區民生西路136號 ☎02‒2559‒7595 10:30~21:30 無休 1 個50元、2 個90元。2階には広々としたテーブル席がある。

果園先生 屏南商行 グオユエンシエンセン・ピントンサンハン

文/片倉真理 写真/片倉佳史
※この記事は、No. 110 2023年2月号「&Taipei」に掲載されたものです。


台北在住ライター・コーディネーター 片倉真理

1999年から台北に暮らす。台湾に関する書籍の執筆、製作のほか、雑誌のコーディネートなども手がける。台湾各地を隈なく歩き、料理やスイーツから文化、風俗、歴史まで幅広く取材。著書に『台湾探見』、共著に『台湾旅人地図帳』(共にウェッジ)、『食べる指差し会話帳』(情報センター出版局)など。

instagram.com/marikatakura

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