真似をしたくなる、サンドイッチ

チーズが惜しみなくとろけ出す!
ジューシーなフライドチキンバーガー。真似をしたくなる、サンドイッチ Vol.26March 15, 2023

サンドイッチをこよなく愛するパリ在住の文筆家、川村明子さん。『&Premium』本誌の連載「パリのサンドイッチ調査隊」では、パリ中のサンドイッチを紹介しています。
ここでは、本誌で語り切れなかった連載のこぼれ話をお届け。今回は、本誌No112に登場した『ピウピウ!』で惜しくも紹介できなかったサンドイッチの話を。

具材を分析した精巧なスケッチを毎回ご紹介。今回は、フライドチキンが主役のサンドイッチです。 川村明子 サンドイッチ
具材を分析した精巧なスケッチを毎回ご紹介。今回は、フライドチキンが主役のサンドイッチです。

鶏の唐揚げには目がないのです。

もしかしたら前にも書いたことがあるかもしれない。いや、ある気がする。としたら繰り返すことになるけれど、私は、鶏の唐揚げが大好きだ。どれだけ好きかはかなり年季が入っていて、母に言わせれば、幼稚園の遠足のお弁当はもちろん、お誕生日会も毎年私は「唐揚げがいい」とリクエストしていたらしい。フライドチキンも大好きだ。ただその二つは、同じ括りのようでやはり別物で、大きな違いのひとつに、鶏の唐揚げと言った場合、大抵はお箸で食べることを前提に作られているのだろうひと口大のサイズなのに対し、フライドチキンは大ぶりなことが挙げられる。それと味付け。フライドチキンのほうが胡椒がしっかりと効いていたり、スパイシーなことが多いと思う。

ショウガの下味が染み込んだ、ジューシーなチキンカツサンド。

さて。大きなロースターで焼く丸鶏と、フライドチキンを具にしたバーガーが看板商品の『ピウピウ!』に向かった。メニューにひとつだけ「これはバーガーじゃないよ!」と注意書きの付いたサンドイッチがあることに気づいたのだ。その名も"KATSU(カツ)"。具材のひとつにとんかつソースが記されている。そう、カツサンド。でも主役の具は、フライドチキン。要するに、チキンカツサンド、のようだ。

<a href="https://andpremium.jp/book/premium-no-112/">本誌No112</a>で紹介したカツサンド。 見えないけれど、シェフが日本を旅したときに食べた卵焼きを再現してみた、という四角いオムレツがフライドチキンの上にのっている。サンドイッチ 川村明子
本誌No112で紹介したカツサンド。見えないけれど、シェフが日本を旅したときに食べた卵焼きを再現してみた、という四角いオムレツがフライドチキンの上にのっている。

買ってみると、6枚切りと8枚切りの間くらいの厚みの食パンに、ゴツゴツとした衣のチキンカツと千切りキャベツが挟まれていた。ソースのかかっていない側を見てみたら、衣がより顕著で、その堂々たる風貌は食べたらガリッとしそうに見えた。でも、パン粉は使われていないようだ。ってことは、そんなにカツサンドっぽくはないのかもしれない。
しかし、果たしてそれは、まさにカツサンドだった。千切りキャベツとソースの組み合わせで、ここまで印象がカツサンドになるのだなと、感心してしまった。ここで言いたい"カツサンド"は、豚肉を使ったもののこと。『ピウピウ!』のそれは鶏胸肉で作られているのに、目を見張るほど肉厚で身が適度に締まりジューシーで、その食べ応えといったら、うっかり鶏肉であることを忘れてしまいそうになるくらいだった。それと、口の中で鮮明に存在感を示したショウガの香り。どこから来ているのだろうと、分解しながら食べすすめたところ、ソースでも衣でもなく、キャベツの千切りに紛れ込んでいるでもなく、鶏肉だった。鶏肉にしっかり、ショウガの下味が染みていた。

もともとロティスリーだった場所をそのまま引き継ぎ、現代のロティスリーの在り方を探ったそう。ローストチキンは1/4羽分から買える。
もともとロティスリーだった場所をそのまま引き継ぎ、現代のロティスリーの在り方を探ったそう。ローストチキンは1/4羽分から買える。
フライドポテトは毎度あげたて。5種類のソースつき。焦がしオニオン入りマヨネーズ、バーベキューソース、ハニーマスタード、スパイシーマヨネーズ、ホットソース。小さなカップが2つついてくるので、ソースは2種類選べる。
フライドポテトは毎度あげたて。5種類のソースつき。焦がしオニオン入りマヨネーズ、バーベキューソース、ハニーマスタード、スパイシーマヨネーズ、ホットソース。小さなカップが2つついてくるので、ソースは2種類選べる。

考えてみたら、食パンで挟んだチキンカツサンドを食べるのは初めてだった。学生の頃、バーガー型のチキンフィレサンドは大好物で、しょっちゅう食べていた。けれどあれは食パンじゃない。元々クラシックなロティスリー(ロースト料理専門店)だった場所にオープンしたフライドチキンバーガーが売りの『ピウピウ!』。ショウガが香るフライドチキンに、千切りキャベツととんかつソースを合わせたチキンカツサンドは、私の中に眠っていた(豚肉の)カツサンドとチキンフィレサンドの記憶を総動員させた。気をてらったところもなく、馴染みがあるのに、初めての味わい。心が弾んだ。

チーズが惜しみなくとろけ出る、フライドチキンバーガー。

この店のスタンダードを食べてみなくては!と思い、2度目に足を運んだ日は、店の名を冠したフライドチキンバーガーを買った。具材はよりシンプルで、チキンカツサンド以上に鶏肉の迫力を感じた。

川村明子 サンドイッチ

チーズが惜しみなくとろけ出ていたから、チーズも重要な味の構成要素のひとつだろうと捉えてかぶりついたけれど、完全に、鶏肉の風味が優っていた。どちらかというと味付けの要素は、シークレットソースと書かれた白いソースで、一見マヨネーズっぽいものの、卵の風味はしない。ギリシャヨーグルトをベースに作ったソースだそうだ。それが、千切りレタスといい塩梅に絡んでいた。そして、何より驚いたのは、キャベツの千切りがレタスに取って代わられるだけで、随分と印象が変わることだ。ほんの2枚だけ潜んでいるキュウリのピクルスの水分と、レタスのみずみずしさとで口の中がさっぱりするし、それがまたフライドチキンの存在感を際立たせているようにも感じる。

そしてやはりチキンの肉感に唸った。フライドチキンはモモ肉よりも胸肉派!っていう人(私は胸肉派です)、チキンフィレサンド大好き!っていう人には、もう是非とも食べてほしい。それと、サイドメニューも。コールスローもジャガイモのピュレもありますが、タイムをまぶしたフライドポテト、おすすめです。

『PiouPiou!』

3 rue Saint-Lazare 75009 ☎️なし 12:00〜14:00 18:30〜22:30 土11:30〜15:00 日休 サンドイッチ 川村明子
3 rue Saint-Lazare 75009 ☎️なし 12:00〜14:00 18:30〜22:30 土11:30〜15:00 日休 


文筆家 川村 明子

パリ在住。本誌にて「パリのサンドイッチ調査隊」連載中。サンドイッチ探求はもはやライフワーク。著書に『パリのパン屋さん』(新潮社)、『日曜日は、プーレ・ロティ』(CCCメディアハウス)などがある。Instagramは@mlleakiko。Podcast「今日のおいしい」も随時更新。朝ごはんブログ再開しました。

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