モダン建築ディテール探訪

テーマ 目と舌で美空間を味わう。-奥村文絵さんがガイドするモダン建築-モダン建築ディテール探訪 VOL.03 / September 18, 2021 /〔PR〕

2021年9月25日より京都市京セラ美術館にて開催される展示「モダン建築の京都」に合わせて、在住のクリエイターやショップオーナーたちが、街に点在するモダン建築の”細かいところ”を紹介するこの連載。第3回はフードディレクターの奥村文絵さんが、飲食も楽しめるモダン建築を巡ります。

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建物が持つストーリーへの、
興味をも掻き立てられる空間。

 携わる仕事の中心に食がある奥村さんが選んだのは、その空間での飲食が可能なモダン建築。「明治から昭和にかけ、京都がいつも時代の最先端にいたことを伝える建物ばかり。この百数十年、世界に学んで並ぼうという意欲や志に京都の人々は満ち満ちていたのだと感じます。それの多くが個人商店として今に受け継がれ、けっして広くはない街中に凝縮しているのが京都のおもしろさ。それぞれの建物が造られるまではもちろん、今に至るまでのストーリーにも心惹かれます。天井や壁、床など細部まで凝った意匠を眺めながら、美味を堪能できるのも贅沢な時間です」

起伏に富む『無鄰菴(むりんあん)』の飛び石は、  庭師の意を伝えるビューポイント。
起伏に富む『無鄰菴(むりんあん)』の飛び石は、 庭師の意を伝えるビューポイント。

山縣有朋の別荘庭園は明治29年の完成。「七代目小川治兵衛による東山を借景にした庭園が見事。凸凹した飛び石の中に伽藍石(がらんいし)など平らで大きな石が交じるのは、そこが庭を眺めるべきポイントだと」

部屋ごとに異なる天井や壁の意匠  ひとつひとつに心打たれる『長楽館』。
部屋ごとに異なる天井や壁の意匠 ひとつひとつに心打たれる『長楽館』。

明治42年、煙草王・村井吉兵衛により建てられた迎賓館。「アメリカ人建築家による設計を、西洋建築に触れたことがなかったであろう職人が造ったと思うと、技術力の高さや気概に心が熱くなります」

洋食レストランから北京料理店へ。  業態を変え姿を守った『東華菜館』。
洋食レストランから北京料理店へ。 業態を変え姿を守った『東華菜館』。

竣工は大正15年。ヴォーリズ建築で唯一のレストランは、華やかな装飾を施したスパニッシュ・バロック様式。「進駐軍に接収されないようにと、中国の友人に譲った物語も知って過ごしてほしい空間」

『レストラン菊水』の意匠は、  当主の好みを盛り込んだ賑やかさ。
『レストラン菊水』の意匠は、 当主の好みを盛り込んだ賑やかさ。

初代が上海で見聞を広め、アール・デコやスパニッシュなど当時の流行を様々に取り入れたレストラン。大正15年竣工。「アーチを描く塔屋や、細かな細工が施された照明など、他にはない意匠が楽しい」

創業時と変わらない喫茶であり続ける  意義を感じる『フランソア喫茶室』。
創業時と変わらない喫茶であり続ける 意義を感じる『フランソア喫茶室』。

自由な言論の場として昭和9年に創業した喫茶室。この内装は昭和16年のもので、豪華客船のホールを思わせるイタリアン・バロックが基調。「常々食の空間は舞台だと感じますが、ここはまさにそう」

日仏の建築家が融合して完成した  『アンスティチュ・フランセ関西』。
日仏の建築家が融合して完成した 『アンスティチュ・フランセ関西』。

昭和11年竣工のフランス政府公式の交流機関。本国の建築家による設計を、木子七郎が実施設計した合作。「海外の学校を思わせる造り。昔のままの意匠を目にすれば、当時の教育への情熱が伝わります」

京都市京セラ美術館開館1周年記念展モダン建築の京都

会期 2021年9月25日〜12月26日
場所 京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ

寺社仏閣にとどまらず、明治〜昭和中期の貴重な「モダン建築」も数多い京都。その代表とも言える京都市京セラ美術館で行われる本展示は、近現代建築の模型や図面、家具など400点以上が並ぶ貴重な機会に。

photo, text & edit : Mako Yamato illustration : Junichi Koka
協力:(公財)日本ナショナルトラスト(駒井家住宅《駒井卓・静江記念館》)


フードディレクター 奥村文絵

’08年、食を専門とする〈foodelco〉を設立。日常の道具を扱うギャラリー『日日』、オーガニック煎茶のティールーム『冬夏』を運営。

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