モダン建築ディテール探訪

テーマ 公共建築に込められた美。-清水香那さんがガイドするモダン建築-モダン建築ディテール探訪 VOL.04 / October 20, 2021 / 〔PR〕

京都市京セラ美術館にて開催中の展示「モダン建築の京都」に合わせて、京都在住のクリエイターやショップオーナーたちが、街に点在するモダン建築の”細かいところ”を紹介するこの連載。第4回は『スターダスト』店主の清水香那さんが、公共建築として造られたモダン建築を巡ります。

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時代を超えて輝く建築に、
当時の人々のプライドを知る。

 徹底した審美眼にファンも多い清水さんが注目したのは、機能性だけを重視するのではなく美を備えた公共建築。「アイスランドやデンマークなど、公共建築の美しさに感動することの多いヨーロッパ。では日本はと振り返って考えれば、きちんと手をかけ建てられた昔のものはやはり美しい。予算をはるかに超えて作られた琵琶湖疏水の水路閣などを考えると、かつての人々の美に対する寛容さを感じます。今も残る凝った意匠を持つ公共建築から伝わってくるのは、日本をよりよく押し上げたいという人々の熱い気持ち。京都という街を改めて好きにさせてくれるモダン建築です」

煉瓦のアーチと細やかな装飾が、緑豊かな境内に溶け込む「水路閣」。
煉瓦のアーチと細やかな装飾が、 緑豊かな境内に溶け込む「水路閣」。

明治21年完成の琵琶湖疏水の水路橋。「設計はまだ20代前半の田辺朔郎。府の年間予算の倍をかけても完成させた市井の人々の心意気と、装飾性を持ちつつも南禅寺境内で違和感のないデザイン性が見事」

文明の象徴だった電気を作る喜びをシンボルの星に込めた「蹴上発電所」。
文明の象徴だった電気を作る喜びを シンボルの星に込めた「蹴上発電所」。

琵琶湖疏水の第2期発電所として明治45年に竣工。「煉瓦造りの発電所は水路閣に通じる意匠。三条通側の外壁にある星形の装飾は、当時発電所を管轄していた水利事務所の徽章だそうで、これも素敵」

祇園祭の山鉾町に満ちる美意識が、凝縮する「京都芸術センター」。
祇園祭の山鉾町に満ちる美意識が、 凝縮する「京都芸術センター」。

下京三番組小学校として明治2年開校の旧明倫小学校校舎(昭和6年竣工)を活用。「3本線が入る研ぎ出しの柱など三番組らしい意匠や、子どもたちに立派な学舎を建てた町衆の情熱に胸が熱くなります」

「京都市役所」の筆の意匠の塔屋に、近代建築が目指した和洋折衷を見る。
「京都市役所」の筆の意匠の塔屋に、 近代建築が目指した和洋折衷を見る。

武田五一監修の下、中央から東は昭和2年、西は昭和6年に竣工。「ヨーロッパの雰囲気を漂わせる建築様式に葱花型アーチや、筆や蓮華のモチーフなど、東洋の意匠がちりばめられていて見応えあるものに」

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大理石やタイルの贅沢さから伝わる 「京都市京セラ美術館」への情熱。

昭和8年に開館、昨年大規模改修を経て生まれ変わった。「大理石に彩られた旧券売所の小窓、様々に使われたタイルなど、時を経ても色褪せない贅沢な素材づかいにも、美術館への意気込みを感じます」

華美になりすぎずも心に残る、「同志社礼拝堂」に漂う凛とした美。
華美になりすぎずも心に残る、 「同志社礼拝堂」に漂う凛とした美。

建築技術を持つアメリカ人宣教師、D.C.グリーンの設計で明治19年に竣工。「プロテスタントの教会らしく装飾は控えめながら、ステンドグラスを模した色ガラスや梁に引かれた赤いラインが印象的」

京都市京セラ美術館開館1周年記念展モダン建築の京都

会期 2021年9月25日〜12月26日
場所 京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ

寺社仏閣にとどまらず、明治〜昭和中期の貴重な「モダン建築」も数多い京都。その代表とも言える京都市京セラ美術館で行われる本展示は、近現代建築の模型や図面、家具など400点以上が並ぶ貴重な機会に。

photo, text & edit : Mako Yamato illustration : Junichi Koka


『STARDUST』オーナー 清水 香那

『スターダスト』店主。長屋を何風でもなく改装した空間に、洋服や器、ジュエリー、仏・リヨンから届く茶葉など、清水さんの心に響く美しいものを揃える。

stardustkyoto.com

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