Good for Me 編集部が出合ったベターライフ。
静寂と溶け合う音楽/MUSIC FOR BETTER LIFE #2 January 2025January 04, 2025
しんとした空気に余白たっぷりに響くサウンド。
この『&Premium.jp』には以前、音楽家の青葉市子さんが手がける「Choe」という連載がありました。その時々に彼女が感じているもの(=Choe)をテキスト、写真、音楽で自由に表現するという内容で、担当編集は僕。青葉さんはメロディが思いついたらすぐに、手元のギターを爪弾いたりハミングしてiPhoneで録音していたようで、周辺の環境音も入り混じった形でひょいっと送ってくれました。受け取った僕はすぐに静かな場所に行き、生まれたてのミニマルなサウンドに耳を澄ませる時間が本当に幸せだったことを覚えています。
今回は1月の澄んだ光と空気、そして静寂に溶け合うような音楽をお届けします。環境音楽的なサウンドや、たっぷりと余白のある旋律、隣で囁いているようなヴォーカルなど…ぜひしんとした部屋で浸るようにして聴いてみてください。
1曲目はアンビエント・ミュージックの巨匠、吉村弘の楽曲から。聴く場所それぞれの環境音と合わさって初めて完成するように感じられる一曲です。
3曲目は昨年末にリリースされた、12組のアーティストによるピアノソロ曲集『piano1』より青葉さんの作品を。ザラザラとくぐもった音像は、まさに僕が連載中に受け取っていたサウンドに近く、親密感のある響き。同じく青葉さんの『アダンの風』からピックアップした4曲目「Parfum d'étoiles」では、ぜひハミングに耳を澄ませてほしいです。
7曲目の「Vague」は韓国のSSW・Kimbannorkeの2024年作『Absence』から。繊細で儚い声に引き込まれます。LPは京都『RECORD SHOP GG』のレーベル〈GG RECORDS〉よりリリースされていますので、この曲で気になったらぜひ手に取ってみてください。歌詞も美しく、LPには日本語訳の歌詞カードも付いてきます。
12曲目、スペインのコントラバス奏者Magalí Datziraの「Hi ha un abisme」は、2024年リリースの作品『LA SALUT I LA BELLESA』から。Tiny Desk的な、最低限の編成で心地よく演奏している様子が伝わってくる、温かみのあるサウンドです。
15曲目の冬にわかれて「なんにもいらない」は新譜ではありませんが、定期的にしっとり浸りたくなる一曲。その圧倒的な詩世界とだんだんと熱の入るサウンドに、聴き終わるころには“食らっている”感覚になります。個人的な「ふと聴いて涙する曲」ナンバーワンです。
来月はまだまだ寒そうですね。心だけでも暖かく、「ハートウォーミングな音楽」をテーマに、柔らかな声とサウンドが沁みる作品を中心に選曲します。
編集部員によるリレー連載「Good for Me. 編集部が出合ったベターライフ」がスタートしました。ファッションや日用品、おいしいおやつ、旅先で見つけたもの…など、時には極めて私的な視点でお届けする編集部員のオススメはこちらから。