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香ばしく焼かれた『360°』のバスクチーズケーキには、濃厚なミルクティーを。写真と文:大西進 (『teteria』主宰) #3October 21, 2025

ミルクティーは万能だ。

「困ったらミルクティーを出しておく」(大西談)という言葉がある。

実際どのようなお菓子ともうまくやってくれる。飲みものの中でもトップクラスの包容力を持つミルクティーはいつもどっしりと構え、大抵の味の衝突トラブルを収めてくれる。優秀なミルクティーは、相手が酸味でも苦味でも渋味でもおいしくしてくれる。口の中に悲しい味を残さない。ただ、安心は安心だが、包容力がありすぎるのでなんでもミルクティーを合わせてしまい、結果、退屈な組み合わせになることも多く、安心と退屈は背中合わせということを私は紅茶から学んだ。お菓子全般をカバーする代わりに(ごく一部を除いて)ドカンと雷が直撃するような、グラグラと顎が揺さぶられるような、おいしさにはなかなか出合いにくい。

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お取り寄せ専門のパン屋『360°』のバスクチーズケーキには、ミルクティー。真っ黒になるまで香ばしく焼かれ、表面が魅惑の香りを生み出すバスクチーズケーキには、撹拌しながら温めたたっぷりのミルクに、通常の4倍の濃さで抽出した濃厚な紅茶をソースのようにひと匙加えるタイプのミルクティーを。強い紅茶の味とまろやかで優しいミルクが同時に楽しめる。チーズケーキの部分にミルクを、外側の焦がした部分に強い紅茶の味を当てるイメージで。

edit:Sayuri Otobe


『teteria』主宰 大西 進

大西 進
おおにし・すすむ/1976年、群馬県生まれ。大学卒業後、紅茶専門店勤務を経て、2005年に紅茶を中心とした茶葉の卸販売と、紅茶の楽しさを伝える教室やwebショップ、紅茶メニューの開発などを行う紅茶屋『teteria(テテリア)』を始める。現在は、静岡県在住。著書に『紅茶の絵本』(ミルブックス)など。

instagram.com/teteria.onishi

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