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ビール瓶と、みなし電線。 連載コラム : 石山蓮華 #3January 20, 2025
電線を愛でていると、物理的には電線のないところでも電線が見えるようになる。
たとえば、飲み会のテーブルの上に並んだビール瓶。
瓶と瓶がおなじ間隔で置かれていると、瓶のあいだの空中に、透明な送電線が見える。
ビール瓶は、上に向かって細くなる形をしている。これは、土台がしっかり太く、上に行くほど細くなっていく送電鉄塔と似た構造だ。
送電鉄塔とは、たくさんの電気を運ぶ送電線を支えるための塔である。山の中や河川敷、住宅街にもすんっと立っている。
一般的に、送電線には「鋼芯アルミより線」という種類の電線が使われている。金属の中でも軽くて電気をよく通すアルミニウムがロープのように編まれ、真ん中に鋼鉄の芯が通され、より頑丈な作りになっている。
そして、このビール瓶を送電鉄塔に見立れば、鉄塔をつなぐ送電線があるのはごく普通のこと。おのずとそこに電線が見えてくるのだ。
photo:Renge Ishiyama edit : Sayuri Otobe
電線愛好家、文筆家、俳優 石山 蓮華
1992年生まれ。TBS ラジオ『こねくと』(毎週月〜木曜日14:00〜17:30放送)メインパーソナリティ。電線愛好家として『タモリ倶楽部』などのメディアに出演するほか、日本電線工業会公認“電線アンバサダー”としても活動。著書に『犬もどき読書日記』(晶文社)、『電線の恋人』(平凡社)。