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お茶しよ。写真家・小林真梨子さんのシェアハウスで、中国茶会。文:後藤景太郎 (『茶酔 (ochayoi) 』) #1February 04, 2026

はじめまして、景太郎です。

友達と『茶酔(ochayoi)』という中国茶のプロジェクトをやっています。といっても、茶葉を売ったりするわけではなく、人と一緒にただ、茶を飲み続けるという活動です。なのでお茶屋さんではなく、あくまでお茶飲み屋さんといったところです。

「お茶しよ」という慣用句は、とても便利な言葉です。初対面の人に「少し話しましょう」だとなんだか重い。最近なかなか会えていない人に「飲みに行こう」と誘うのもいいけど、もっと軽く誘いたい。そういうとき、くよくよ考えずに「お茶しよ」と言ってしまえば、大概うまいこといきます。

幸い、私は人と茶を飲むことを活動にしていて、この慣用句が言い放題。この連載では、私が「お茶しよ」と言って会った人との話を書くことにしました。

ちょっと前に、写真家の小林真梨子さんの家でお茶したときの話。

真梨子さんとは直接会うのは初めてだったけれど、もともと友達の友達で、お茶に興味があると聞いていた。それなら、「真梨子さんの家でお茶をしよう」ということに。彼女はシェアハウスを運営していて、そこの住人や友達も呼んでくれた。

到着するとすでに5人ほど集まっていて、みんな盛大に迎え入れてくれた。どうやら、「お茶の先生が来る」と聞いて、背筋をピンと伸ばして待ち構えていたみたい。「そんなんじゃないんです……」と恐縮しながら席について早速茶の道具を広げる。

もっと気軽に、お茶しよ。写真家・小林真梨子さんのシェアハウスで、中国茶会。写真と文:後藤景太郎 (『茶酔 (ochayoi) 』主宰) #1
photo:Mariko Kobayashi

茶を煎れて飲み始めるも、先生と呼ばれてしまっては、どうにもやりづらい。「お点前は……」「これはどう飲んだら?」という質問に、「作法はないです!」「口に入れて飲み込みます!」とか答えるけれど、なかなか先生ポジションから降ろしてもらえない。

そこで、茶道具一式を順繰りに回して、ひとりずつ茶を煎れていくことにした。そしたらさっきまでの緊張感は嘘みたいに、みんな楽しそうに茶を煎れ始めた。真梨子さんは所作にまったく迷いがなく、熱湯をバシャバシャ茶盤にこぼしながら煎れていくその様は、豪胆というか気持ちがいいほどで、次第に真梨子さんが先生と呼ばれるようになった。

もっと気軽に、お茶しよ。写真家・小林真梨子さんのシェアハウスで、中国茶会。写真と文:後藤景太郎 (『茶酔 (ochayoi) 』主宰) #1 | photo:Mariko Kobayashi
photo:Mariko Kobayashi
もっと気軽に、お茶しよ。写真家・小林真梨子さんのシェアハウスで、中国茶会。写真と文:後藤景太郎 (『茶酔 (ochayoi) 』主宰) #1 | photo:Mariko Kobayashi
photo:Mariko Kobayashi

茶葉を変え、煎れる人を変え、どこまでもお茶を飲み続ける。

コンロのやかんでお湯を沸かしていたら、シェアハウスの住人のシェフの人が、熱湯の見極め方を教えてくれた。やかんから湯気が勢いよく出ているときは、実はまだ90度くらいで、100度になると湯気がもう一回落ち着くらしい。

みんなでやかんから出る湯気の具合を睨んで、「100度だ!」「まだだ!」なんて言っていたら、あっという間に夕方になった。

最後の茶を飲むと、それぞれゆるやかに、ふわふわと帰路についた。外に出ると雨が降っていて、住宅の植栽から草の香りがした。

真梨子さん、シェアハウスのみんな、ありがとう。またお茶しよ。


〈茶酔(ochayoi)〉 後藤景太郎

profile_後藤景太郎
ごとう・けいたろう/熱茶を飲み続けてリラックスしながら覚醒する現象「お茶酔い」を軸に、ZINEやPodcast、茶会イベントなどの活動をしている。最新刊は『茶酔叢書 巻山』(機微社)。

instagram.com/ochayoi

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