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壊れてしまった花器。写真と文:浅見旬 (編集者、ライター) #1March 04, 2026
思いもよらぬかたちで古物を扱う仕事をはじめ、数年にわたり(やすみやすみ)続けていると、ときに運悪くものを壊してしまうことがある。これは古物商を続けるには避けがたいジレンマ、なんかではない。きっと私の不注意のせいでしょう。これから4回の連載にわけて、不注意の顛末を紹介します。古物売りが壊したものです。

しかし題に「花器」と書いたものの、そうは呼ばれてこなかったんじゃないか。取手らしき部分には、ぐるり伸びた毛のような針金の造形があるので下手に掴めない。これまでの持ち主も、釣り鐘のような下部を支えるようにして持ち運んだのでは、そんな様子が想像できる。顔を近づけると、側面に針金と似たかたち(「g」あるいは「6」「9」「q」のような)が引っ掻いてうすく刻まれていることに気付く。引いて見ると、足をもがれたイカのようにも見える。
『Goods』という名前で店を開く前の準備期間、コロナ禍真っ只中のアメリカに滞在している時期に、この古い陶器を見つけた。カリフォルニア州の球技場、ローズボウルで開かれる、西海岸最大級のフリーマーケットでのこと。朝の5時から開くと聞き、はしゃいで開場きっかりに駆けつけ、あんまり早いので多くの出店者は準備中か、まだ来てもいなかった。夜の明け切らない薄明の会場で、暗くてよく見えない、すれ違う出店者の顔も商品も渾然とした墨だまりの風景を歩いて待つ。地図で見ていた会場は広大で、ここにあるすべては到底見て回れないと、歩くほどに痛感する。ほどなく日が昇るにつれ熱を帯び、なんといっても日差しが強い。上着を脱ぐ頃には余計な憂鬱は溶けた。

そうしていざ百千もの売り手の間を歩いていると、こなれているやつ、インチキくさいの、商売上手とそうじゃないやつと、それぞれのやり方が目につく。とりわけ目を引くのは、テーブルも出さないで使い古しの絨毯を地面に敷いて商品をまばらに置いただけの、しかも奥にはまだ段ボールを積んでいるくせにもったいぶっているやつ。「なあ、けちけちせんとその箱のなかも見してや」と言う度胸も語彙もないので、絨毯に転がっているこの花器らしきものと、ほかにもいくつか陶器をうやうやしく求めた。

昨夏、編集者・大和佳克さんがやられている『大和フラワー』との展示のために韓国・ソウルのブックストアへ飛び、航空機に積んできた商品詰めのスーツケースを開いたとき、緩衝材の奥からジャリと不愉快な音が耳に聞こえた。遠方へ出張のときこそ、ものの扱いに注意だけれど、いつも反省したきりで学びがない。割れた陶器がこすれる音と手触りの、あれほど嫌な感じはないというのに。居たたまれなく捨てることもできず、売れもしないので、身の周りにはどんどん壊れたものが溜まる。この陶器は壊れてようやく、差口に遮るものがなくなり花が挿しやすい。

編集者、ライター 浅見 旬



























