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サワードゥ日誌 vo.4。『DEAN & DELUCA』の新作カントリーブレッド。 写真と文:池田浩明 (『パンラボ』主宰) #4April 28, 2025
過去3回書いてきたこの連載も、いよいよ最終回。
「サワードゥってどこで買えるの?」「近所で買えないかな?」「手軽に食べられないかな?」と思っている人に提案がある。
3月から全国の『DEAN & DELUCA』で、カントリーブレッドが発売になった。

これは、サワードゥムーブメントの発火点となったサンンフランシスコの名店『タルティーンベーカリー』の元ディレクターのジェニファー・レイサムさんと共同開発した本格派。
それはパンの背の高さに表れている。
西海岸流のカントリーブレッドは、ぶわっと縦にふくらんだ堂々たるボリュームが特徴。ヨーロッパのサワードゥ、いわゆるカンパーニュとの大きな違いだ。
手軽に味わうなら、『DEAN & DELUCA』のカフェで提供されているサンドイッチがおすすめ。なぜって? サワードゥは具材を挟んだり、料理と一緒に食べるときに、本領を発揮するパンだから。
なかでも最近話題になっているのは、「アボカドとハーブチキンのサンド」(6月4日まで販売)。製造が追いつかないほど人気だという。

ハーブマヨやアボカド、ゴーダチーズと和えた蒸し鶏。そのクリーミーな具材に、コクとメリハリをつけてくれているのが、このカントリーブレッド。
『DEAN & DELUCA』のカントリーブレッドには、「ブラウン」と「ホワイト」の2種類があり、シーンや食材に合わせて使い分けられる。
ハーブマヨに合わせているのはブラウン。生地には穀物を混ぜ込んでおり、麦だけのサワードゥ以上に、ずしんとくるコクにあふれている。
このサンドを食べた人の多くは、「パンがおいしい」と感動するそうだ。「サンドイッチって具材が主役だと思っていたけど、パンがおいしいとこんなに違うんだ」と。その言葉は、パン好き・サワードゥ好きとしては、とても嬉しいこと。
ちなみにこのブラウン、生ハムやブルーチーズのような濃厚な素材に合わせるのが個人的におすすめ。

一方のホワイトは、酸味を抑え、小麦のミルキーさを前面に出した、まるい味のサワードゥで、フレッシュチーズやフルーツなどと相性がいい。
ブラウンもホワイトも、日本人の好みに落とし込んだ、サワードゥの秀逸なエントリーモデルだと感じている。
サワードゥ応援団の僕が『DEAN & DELUCA』に期待を寄せる理由には、全国の駅近など、誰でもすぐアクセスできる場所にあるということ。そして、もっと大事なのは、『DEAN & DELUCA』が“食のセレクトショップ”であるということ。
サワードゥは、主食としてテーブルの真ん中にあって、さまざまな食材をつなぐもの。

『DEAN & DELUCA』マーケット店舗にはデリや生ハムやチーズやオリーブオイルやジャムやドレッシング...。サワードゥをおいしく彩ってくれるものが揃っている。
そんなサワードゥの世界を体験するキーワードが、僕の考える「プラスワン」だ。
『DEAN & DELUCA』に行ったら、パンだけを買うのではなく、もう一品プラスして買ってほしい。
あるいは自分でなにか一品を添えて楽しんでみてほしい。サラダでも目玉焼きでも、普段のおかずに合わせるだけでいい。
「プラスワンでこんなにおいしくなるの?」という体験を僕だけじゃなく、みんながしてくれたら、サワードゥのカルチャーも広がっていくと思うのだ。
実は僕も、少しだけ『DEAN & DELUCA』のサワードゥプロジェクトにかかわっている。
このカントリーブレッドに、パンラボがプロデュースした、茨城県産小麦ゆめかおりの小麦粉「Dreamer」(生産・茨城県パン小麦研究会、製粉・前田食品)が使われている。
僕自身も、『DEAN & DELUCA』のベイカーたちや製粉所の人たちと一緒に、茨城県境町にある高橋大希さんの畑で、麦踏みをした。
意外と私たちの近くにあり、顔の見える小麦。
それを、身近な製粉所で挽いて、なるべくフレッシュな状態で使う。自ら育てた酵母で醸し、職人技でパンに仕上げる。
そんなパンだからこそ、日々の食事がもっと大切なものになる。全粒粉を使うことで不足しがちな食物繊維を補える。そして、東京近郊の畑を守ることにもつながる。
かかわる人たちみんなの思いが集まって生まれるパンが、きっと私たちの食卓を変え、よりよい未来へとつなげてくれるはず。
サワードゥを作る人も食べる人も。みんなDreamerとして、そんな同じ夢を追っていけたら嬉しい。
edit : Sayuri Otobe
パンの研究所『パンラボ』主宰 池田浩明
