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あこがれの歌姫、ナラ・レオン。 TBSアナウンサー・吉村恵里子 #3March 19, 2025
ボサノバを知るうえで欠かせないアーティスト、続いてはナラ・レオンです。
私は幼少期から家でクラシックやジャズ、ボサノバが常に流れている家庭で育ちました。当時はアーティスト名も、歌詞の意味も知らず、それでも一番口ずさんでいたのがナラ・レオンのアルバムでした。
ブラジルの資産家の娘として生まれたナラ・レオンは「ボサノバのミューズ(女神)」と言われています。
ブラジルの「コパカバーナ」にあったナラの家には、若手の音楽仲間が自然と集まっていたそうで、そこでボサノバが育っていったのかもしれません。ナラは社会派歌手としても活動しており、政治批判を強めたことでブラジル政府に追われ、パリに亡命。脳腫瘍のため46歳の若さでこの世を去りました。(ちなみに1月19日はナラの誕生日で、松任谷由実さんや宇多田ヒカルさんも同じ日です。)
私が愛するアルバム「ナラ・レオン/Meus Sonhos Dourados(あこがれ)」。
ナラの優しい低音ボイスには哀愁があり、彼女の人柄は感じられず、むしろどこか淋しさや冷たさが伝わります。
力が抜けていく、しっとりとした、“じれったさ”すらあるナラの声が大好きです。
幼い頃から近所の映画館に通っていたというナラの、映画への想いが詰まった名盤で、ナラが描く音楽の中に私たちもいるような感覚になります。
とある老舗ジャズ喫茶を訪れた際、控えめの照明で、レトロな雰囲気、そして木製のテーブルや大型スピーカーから流れるジャズに耳を傾ける感覚は、由緒ある映画館を連想させ、ナラの想いを感じさせてくれた気がします。
ちなみにここのバー、あらゆるレジェンドたちがここを訪れ、サインを残しているのです。
ジャズピアニストのビル・エヴァンスやチック・コリアなどなど……興奮冷めやらぬ夜になりました。
edit : Sayuri Otobe
TBSアナウンサー 吉村恵里子
