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ぼくが犬を迎え入れるまでの話。「ブリーダーのもとへ」。 写真と文:イラストレーター・アボット奥谷 #3April 17, 2025
4月になると思い出すことはまだ他にもある。
それは妹二人が同じ誕生日だということ。犬が我が家に来た日も同じ。他人の誕生日や日付を覚えるのが苦手な不義理なぼくでも、4月25日は特別な日すぎて今後も忘れようがない。

飼いたい犬種が決まったら、次はどこから犬を迎えるかだ。
調べてみてわかった犬を迎えるための主な方法は大きく分けて三つ、「ペットショップ」「ブリーダー」「保護犬の譲渡会」。
犬のことを考えると「ペットショップ」の生体展示販売には賛成できないし、初心者で知識もない自分がそれぞれ事情の異なる保護犬の世話が十分にできるか自信が持てず、消去法で「ブリーダー」から犬を迎えることにした。選ぶのが苦手な自分らしい決め方だ。
多くの方が利用しているが、ぼくもブリーダーサイトからブリーダーに連絡をして子犬を見せてもらうことにした。
ぼくが住んでいる東京にはなんでもあるけれど、ないものもある。その一つがブリーダーの家だ。
大体のブリーダーは東京から遠くにいる。さらに、その最寄り駅からも遠い。天竺レベルの遠さだ。車のないぼくには無理すぎる距離だったが、犬に会う以外の目的で訪れることのないだろう町に、何本も電車を乗り継ぎ、時間もお金もかけて行くという行為が、犬を飼うためにクリアしなければならない試練のように感じて不思議と気分が高揚した。
結局、二か所めに訪れたブリーダーの犬舎で出会った子犬が今の飼い犬の「ぺろ太」だった。
初めて会った時、元気にあちこち駆け回る兄弟とは対照的に、ブリーダーさんの後ろに隠れるようにしてこちらを見て、「今回はぼくはいいです」とでも言いたげな顔をしていた。その姿が子どもの頃の引っ込み思案な自分と重なり、この子とならうまくやっていけるのではないか!?と思った。犬にとっては不本意だったかもしれないが。
抱き上げるとぼくの手をぺろぺろ舐めていたのが名前の由来。「コン太」と最後まで争ったけど、僅差で「ぺろ太」が勝利した。
最近、保護活動をしている人から教えてもらったのだけど、保護犬はある程度の年齢の子が多いため、あらかじめ性格や好みなども把握できていて、パピー期から育てるよりも楽な場合が少なくないとのこと。
先入観でハードルを上げてしまっていたけれど、もしまた犬を迎える機会があったら、あの時は選べなかった保護犬という選択肢について前向きに考えてみたい。

edit : Sayuri Otobe
イラストレーター アボット奥谷
