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「自分を客観的にみる」『李青』オーナー・鄭 玲姫さんの、暮らしとセンス_前編April 01, 2023

2023年3月20日発売の『&Premium』の特集は、「センスのいい人が、していること」。センスがあるといわれる人たちは、どんな暮らしをしているのか。 ここでは京都で李朝喫茶『李青』を営む鄭 玲姫(チョンヨンヒ)さんの暮らしを紹介。「家の中の気に入っている場所」「自分のセンスを育んできたもの」「日々、大事にしている習慣」「大切に思っているものたち」の4つを通して、鄭さんのセンスを紐解きます。
この記事は前編です。後編はこちら。

「自分を客観的にみる」 『李青』オーナー・鄭 玲姫さんの、暮らしとセンス_前編
鄭さんの書斎。食後はここで読書。今、読んでいるのは幸田文の、表紙に丹波布が張られた全集。「幸田文さんはしっかりと自分の考えがある大好きな人」

1.家の中の気に入っている場所。 Comfortable Space

「自分を客観的にみる」 『李青』オーナー・鄭 玲姫さんの、暮らしとセンス_前編
古本好きで、古本ばかり集めていた時期も。書斎は以前は本棚に囲まれていたが、今は整理をして本当に好きなものだけを残した。その隙間にミニチュアの世界を作っている。

自分の居場所でもある書斎の本棚には、ミニチュアの本や陶器が置かれている。「細かいものが好きで、たくさん集めていました。もっとたくさんあったのですが、より抜きで。ここは自分だけの世界。本当に暮らしているイメージです。箱の中に家を作って没頭する。それをあちらこちらに作っている気がします」

2.自分のセンスを育んできたもの。 Past Experiences

1 冊だけ残している雑誌『ミセス』1989年3 月号。このページに載っている、モデルでもあるティナ・ラッツがデザインしたジュエリーが欲しくてたまらなかったそう。
1 冊だけ残している雑誌『ミセス』1989年3 月号。このページに載っている、モデルでもあるティナ・ラッツがデザインしたジュエリーが欲しくてたまらなかったそう。
朝鮮時代の貴族階級、両班(ヤンパン)の生活様式を保存している河回村を訪れたときの写真。「自分の国の昔のそういう文化に触れたことがなかったので、涙が出るほど嬉しかったです」
朝鮮時代の貴族階級、両班(ヤンパン)の生活様式を保存している河回村を訪れたときの写真。「自分の国の昔のそういう文化に触れたことがなかったので、涙が出るほど嬉しかったです」
『李白』から譲られた陶磁器たち。伝 魯山人といわれる麦藁手のカップ&ソーサーと、『李白』で実際に使われていた、李朝を手本とした陶芸家・髙仲健一の作品。
『李白』から譲られた陶磁器たち。伝 魯山人といわれる麦藁手のカップ&ソーサーと、『李白』で実際に使われていた、李朝を手本とした陶芸家・髙仲健一の作品。
古本店などで購入した、民藝についての本。これらで勉強し多大な影響を受けた。「自分の目で見たり触れたりしたもの、知り合った人、ありとあらゆることから吸収しました」
古本店などで購入した、民藝についての本。これらで勉強し多大な影響を受けた。「自分の目で見たり触れたりしたもの、知り合った人、ありとあらゆることから吸収しました」

李朝について教えてくれた、師匠と敬愛している茶房『李白』。そこから譲られた陶器の他、様々な民藝の本は鄭さんの宝物。「民藝は世界中にあるし、侘び寂びの感覚も名前をつけたのは日本独特の感性ですが、西洋、東洋問わずどこにでも存在しています」。右下の写真は韓国の民俗村、河回村(ハフェマウル)を旅したときのもの。

他人に追随しない、 オリジナリティを持つ。

 京都で李朝喫茶『李青』を営む鄭 玲姫さんのセンスに対する考え方は、とても明快だ。

「75年という長い人生のなかで一つだけはっきりわかったのは、むやみに他人の真似をしてはいけないということ。それだけはずっと思って生きてきました」

 流行りやみんなが持っているから、という理由で自分の持ち物を決めるのは、愚の骨頂だと言う。

「これだけ多種多様なデザインがあるなかで、本当に好きで似合うものは何かをとことん自分に問うてみる。なおかつ人と同じは嫌だとなるととても難しいのですが、それをきちんと考えないとおかしなことになってしまいます」

 例えば鄭さんは花柄が大好き。けれど、自分には似合わないことも知っている。だから、人が身に着けているのを見たり、小物にさりげなく取り入れたりすることで、楽しむと決めている。

「諦めが肝心なんです。好きだから似合ってほしいという気持ちはわかりますが、似合わないものは似合わない。諦めないから間違ってしまう。周りは褒めるばかりですから、自分で自分を冷静にジャッジすることが、センスには必要なのではないでしょうか」

 その方法として、鄭さんが勧めるのは全身鏡を見ること。

「あくまで私のやり方ですが、寝室に姿見を置いていて、全身をコーディネートしたら、ふわっとそこに入っていくんです。そうすると鏡に映った姿が他人に見える。そこで違和感があれば似合っていないということ。出かけるときはいつも確認しています」

 彼女のスタイルの基本は、色数が少なく、エレガントであること。

「そうなったのは30代に入ってから。洋服など40年ほとんど変わっていません。自分らしさというオリジナリティを持つ。これがもっとも大事だと思います」

 そんな鄭さんが『李青』をオープンしたのは1998年のこと。東京・神田にあった茶房『李白』に感銘を受け、京都にも李朝文化を紹介する店を出すことを決意。出町柳に1階を喫茶、上階を住居にした建物を作ることになった。その家には、彼女が刺激を与えられたものもたくさん。

「父が李朝のコレクションをしていたのですが、若い頃はなぜいいのかわからなかった。けれど、40代くらいから華やかなものに惹かれなくなり、横にあってもいいな、と思うようになって、勉強を始めました。日本の白磁や古伊万里から始まり、最終的に辿り着いたのが李朝。それら民藝の本は今も目を通します」

 もちろん『李青』を作るきっかけとなった『李白』から受けた影響も大きい。

「亡くなった『李白』の宮原重之さんを私は勝手に師匠と思っています。李朝を見ながらお茶が飲め、文人らが集っている。その空間に衝撃を受け、文化都市である京都にもこんな店があればいいなあ、と思って相談したら、ぜひとおっしゃっていただき、自分の店を開くことができました。『李白』を閉めるときも陶器などを譲っていただき、この店のセンスも、私を育んだといえると思います」

PROFILE

鄭 玲姫 『李青』オーナー

1947年大阪生まれ、京都育ち。1998年に李朝の陶磁器や家具調度品、西欧、アジアのアンティークも置かれた李朝喫茶『李青』をオープン。寺町の2号店は閉店。ものとの出合いは恋におちるようなもの。合図がやってくるという。
https://lisei.thebase.in/

photo : Yoshiki Okamoto edit & text : Wakako Miyake

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