INTERIOR 部屋を整えて、心地よく住まうために。
ライフスタイルコーディネーター・恩田ケイティーさんの、古きよき英国カントリースタイルを愛するキッチン。November 25, 2023
宝箱みたいで、見せたくなるキッチン。
神奈川県の葉山町。逗葉新道を下り、うねる道を上っていった先。リスが枝の間を飛び回る、庭の緑に覆われるようにして立つ家がある。家主は、恩田ケイティーさん。英国のヴィンテージ食器の買い付けや、フラワーデザイン、料理教室の主宰と、多方面で活躍する、曰く「ファッション&カルチャーリーダー」だ。
「とてもかわいいキッチンだから見て、見て」と招き入れてくれたのは、吹き抜けの大きな玄関ホールのある洋館。薪ストーブに火が入った暖かなリビングを抜けると、カントリー調のキッチンに辿り着く。20年前、この家に家族で越してくる以前の住人が、設えたものなのだそうだ。
「木製の、少し古びた感じのあるシステムキッチンが落ち着いて映り、ひと目で気に入ったの。ガスオーブンが入っていたのもうれしくて。タイルのところどころにはかわいらしい絵入り。『おいしいものが作れるぞ』と思いました。引っ越しの決め手になったとも言えるわね」
白い壁だったところだけは、「夫がDIYしたのと、大工さんに頼んで」棚を作り付けたという。
「大好きなスパイスジャーや紅茶の缶などを使いながら飾る用なの。キッチンの雰囲気に合う、動物や草花の絵皿なども並べています」
収納がたっぷりあったのも魅力だったそう。電子レンジが置け、ミキサーやスロークッカー、ホットプレートといった小型電化製品などもしまえるキャビネットが設えられていた。洗濯乾燥機置き場を兼ねた裏手には、リネン用の棚までも。使い勝手がよく、キッチンを暮らしの中心として機能させやすいつくりである。〈シンプレックス〉のケトルや〈ル・クルーゼ〉の鍋、〈富士通ゼネラル〉の冷蔵庫……。30~40年使い続ける道具で溢れ、宝箱のようにも。
「冷蔵庫の中の仕切り棚が金物の時代のものなの。ケトルも、昔のものはよりどっしりとしていて、つくりが精巧な気がするんです。『丈夫で長持ちし、修理のきく古いものは捨てずに使う』をモットーにしているのよ。使い込んで味わいが増した道具ほど美しいものはありませんから」
「時間が不規則になっても、家族皆でテーブルに着き、食後は全員で後片付けをすることを大切にしてきた」とも話す。今は離れて暮らすひとり娘の来訪時も、それは変わらず。食洗機があっても使わずに、「夫と長女が〝人間食洗機〞。夫が洗いものをして、娘が拭く。それを私がしまう流れ作業です。食卓だけでなくキッチンでも会話や時間を共有するのは、家族の絆。LOVEなのです」
恩田ケイティー ライフスタイルコーディネーター
英国のアンティークを扱う〈英国生活骨董KATY’S HAYAMA〉を主宰。英国流家庭料理やテーブル&フラワーコーディネート、ファッションなどの提案も。
photo : Yuka Uesawa edit & text : Koba.A