LIFESTYLE ベターライフな暮らしのこと。
古材や端材を駆使した、環境配慮型台所。- やっぱり、台所は大切です No.01PRACTICAL KITCHENS 01 / June 07, 2021
この1年ほど、自宅で過ごす時間が増え、自然と台所に立つ機会が多くなった、という方も多いのではないでしょうか。段取りよく料理をするための設備や配置、道具や器の収納はもちろんのこと、この場所で過ごす時間もまたベターライフには欠かせません。台所を大切にしている人たちを訪ね、使い勝手と居心地のよさの工夫を見せてもらった&Premium No. 91「やっぱり、台所は大切です」特集から、ここでは栃木県益子町にある『Loveit』の店主はったえいこさんのキッチンを紹介します。
妥協しないもの選びを重ね、美意識が行き届いた台所に。
「家を建てる前から台所の場所は、ここと決めていました。景観を眺めながら料理したいと思って」。そう話すのは、栃木県益子町にある『Loveit』の店主はったえいこさん。その言葉通り、シンクの前に設えた大きな窓の先にはみずみずしい葉をつけた木々が広がっている。そこだけを切り取れば、まるで絵画のようだ。
5 年ほど前に須田ヶ池のほとりに小さな家を建てた。この家は、奥会津の道具小屋を移築し、手を加えたもの。元の小屋が小さかったので、台所と玄関部分は増築した。全体的に茶系の台所は周辺の環境となじむようにと、森の中のような雰囲気をイメージ。集めた古材をうまく活用し、台所に統一感をもたらしている。はったさんは、これまでも端材をさまざまな場所で活用してきた。今回の移築した家もまた解体業者に古材を分けてもらい、外壁としてそのまま使えない材などは、室内のレンジフードや壁板として再利用している。
「移築した家に敬意を払うためにも、できるだけ材料は使いたいと思いました。我が家の作りだと、玄関から入って台所がいちばん目に触れる場所なので、そこに使おうと。ただ、古材といっても何をどのように利用するかが大事なことで、プロの方々に相談しながら、適材適所に再利用できるよう心がけています」
「今あるものでなるべく暮らす」ことを大切にしたいとはったさん。調理道具もまた、昔からずっと変わらないものばかり。ザル、かご、わっぱ、鍋など、いつ買ったかはもう思い出せない。はかなくなったコーデュロイパンツを鍋敷きにしたり、取っ手の取れそうな行平鍋をコーヒー用のジャグの保温用に使ったり、キャンプ道具や空き瓶などは、別の用途にも活用したりと使い方も自由。
「古いものが好きで捨てられない性格。使えるものはなるべく使いたいし、いいなと思ったものは壊れるまで大事にしたい。台所道具は、よくできていて長く使えるからこそ、きちんと選ばないとだめだと思います」
毎日の付き合いを考えて、小さなものでも妥協せず選ぶ。ささやかだがそんな長年の積み重ねが、美意識の行き届いた台所を作り上げている。
はったえいこ
『Loveit』店主
暮らしにまつわるセレクトショップ運営の傍ら、新プロジェクト“Opera Corale Noè”を準備中。不動産・建築コーディネーター、アドバイザーも務める。
photo:Tetsuya Ito edit & text : Chizuru Atsuta
※『&Premium』No. 91 2021年7月号「やっぱり、台所は大切です」より