LIFESTYLE ベターライフな暮らしのこと。
『STROLL』オーナー、小椋えりかさんの自然素材で作った和モダン土間キッチン。December 07, 2022
いい台所とはなんでしょうか? 使い勝手はもちろん、収納のアイデアや片付けのしやすさ、空間としての心地よさ……など、その基準はきっとさまざまです。暮らしを大切にする人たちの、台所の実例集を集めた2022年11月発売の特集「台所、使い勝手と、心地よさ」より、『STROLL』オーナー、小椋えりかさんのキッチンをご紹介します。
PRACTICAL KICHENJAPANESE MODERN
飾ったり、整理したり、目に映る景色を心地よく。
玄関の格子扉を開けると、目に飛び込んでくるのは、真ん前にあるアイランドキッチン。洗い砂利を敷き詰め広くスペースが取られた土間、柔らかな光が差し込む天窓、日本の伝統の建具である簾戸、 本桜(山桜)で作られたダイニングテーブル——。台所のみならず、周りの空間は旅館のような和モダンな風情で日々、心静かに過ごせるような工夫が隅々までなされている。そんな上質なしつらえを考えたのは、愛媛県松山市で器と生活道具の店『STROLL』を営む小椋えりかさんだ。
「店舗を持つ以前は、自宅を開放して店を営んでいました。それもあって、台所がリビングとダイニングの中央にある配置になっています。生活をしていると、色付きの製品が多くなりがちなので、木や石など、自然の中にある素材でまとめたい想いもあって。壁は漆喰を塗ろうか迷いましたが、結局土壁を採用して色のトーンの調和を意識しました」
台所の前面に造作した収納棚の材質は本桜を選んだ。10年以上使った経年変化の味わいが出てきている。 奥に置かれた食器棚は朱理桜の木を使って職人に作ってもらったそう。 「義祖父が材木関係の仕事をしていたこともあり、手元にあった木材を活用しました。収納棚には、器や古道具などを飾って、眺めたときに楽しげになるように。趣味で弾いているピアノの楽譜、器や住宅にまつわる本なども置いています。食器棚のデザインは設計士と一緒に考えて、中身が見えすぎない雰囲気のあるガラスを海外から取り寄せました」
妥協のない細部へのこだわりが、美意識の根幹となっているのだろう。 「飾ったり、整えたりするのが、元来好きですし、素材そのものが持つ魅力に惹かれます。自分には、機能性よりも、見た目が気持ちいいかが大事。それもあって、冷蔵庫は通路の見えづらいところに置きました」
物が少ないとはいえない台所ゆえ、キッチンカウンターの通路を挟んだ 奥に半地下の食品庫も作った。
「乾物類、土鍋、キッチン家電などかさばるものは全部ここに。メインの台所をシンプルに使えるので重宝してます」
小椋えりか 『STROLL』オーナー
日本各地の作家の工房を訪ね歩き、琴線に触れた器、実用性、アート性がある生活道具をセレクトし、実店舗で販売。空間ディスプレイの仕事も行う。
photo : Tetsuya Ito edit & text : Seika Yajima