INTERIOR 部屋を整えて、心地よく住まうために。
放置されていた古い平屋を廃材でDIY。廃屋建築家・西村周治さんの「問いかけ」に満ちた家。April 22, 2025


無駄を出さず、〝あるもの〞で古い家の再生を楽しむ。
「自分が心から求める住まいとは」。その〝本質的な問い〞に向き合い続けるのは、〝廃屋建築家〞の西村周治さん。〝インテリアを整える〞といったアプローチよりも、もっと大きなスケールで居心地のよい住まいの在り方を模索している。
「学生時代は普通にワンルームの賃貸マンションに住んでいました。完全に整備された状態だけれど、自分にとって本当に必要なものがそこにはないように思えて。かといって、新築の家を建てようとすると、ものすごい資源が必要。新たに木材を切り倒す作業が発生するし、電気、水道、人件費などありとあらゆる面でコストがかかる。自分はそうした住宅の在り方に疑問がありました」
西村さんが住んでいるのは神戸市の長田区というエリア。
「年配者の方が多く住んでいて空き家がたくさんあるんです。今は〝家が余っている時代〞。この家は築80年ほどの平屋です。佇まいの格好よさに一目惚れして100万円で購入し、荒れ果てた雑木林を整備するところから始めて。廃屋の朽ち果てるギリギリの状態に面白さや可能性を感じるんです。そういう物件に出合ったら、直さずにはいられなくなる性分というか。友人に手伝ってもらいながら10か月かけて改修しました」
家造りをする際には解体現場を訪れ、使えそうな廃材を回収。誰かの〝いらなくなったもの〞を建築材料として有効活用している。さらに家にあるものについて一つ一つ尋ねてみると、壁時計、照明、収納棚、テーブルの天板など、驚くほどにもらってきたものが多いことに感嘆する。
「廃屋や廃材に向き合っているなかで、なんでも再利用できるんじゃないか、と目を開かされる瞬間がありました。これだけものがあり余っている時代なので、自分はなるべく新しくものを調達せずに生活していきたい。廃材にないものは購入するというスタンスですね。昔はお洒落に部屋を飾っていた時代もありましたが、いまは〝あるもの〞でなんとかするので十分、居心地がいいです」
リビングは天井を抜いて、梁を見せる作りに。もともと使われていた材を生かし、古い住まい特有の味わいを引き出した。一番高いところは3m以上で心地のよい開放感がある。
「梁部分には手作りした木製のブランコを付けて、子どもたちの遊び場として楽しむこともあります」
西村家の至る所に、知恵を絞ってDIYをする楽しさ、一つ一つのものが持つ価値や機能について立ち止まって考えさせられる、哲学的な「問いかけ」が満ちている。


西村周治廃屋建築家
建築設計業務を経て、不動産仲介の仕事に就く。独立後、神戸市で一級建築士事務所「西村組」を主宰。リノベーションした賃貸住宅を提供している。
photo : Tetsuya Ito edit & text : Seika Yajima