Interior

中庭を中心に部屋を積み上げる。 建築家・西川日満里さん、坂爪佑丞さんの、狭くても心地よい住まい。March 25, 2023

春、新年度を迎えるにあたって、心地よい住まいについてもう一度考えてみるのはどうでしょう。狭い部屋や古い家を自分たちらしく整えて、豊かに、楽しくベターライフを送る人たちを取材した、2023年1月20日発売の『&Premium』の特集「楽しく部屋を、整える」から、ここでは、建築家の西川日満里さん、坂爪佑丞さんの住まいを紹介します。

NAME Himari Saikawa, Yusuke Sakazume  OCCUPATION Architect

西川日満里さんと坂爪佑丞さんが住む一
軒家の2 階。奥の一段下がったところがキッチン。キッチン上に中庭があり、フロアを共有する大きな窓をつけた。
西川日満里さんと坂爪佑丞さんが住む一 軒家の2 階。奥の一段下がったところがキッチン。キッチン上に中庭があり、フロアを共有する大きな窓をつけた。
3 階の寝室につながる階段を上がっているのは、6 歳になる琴ちゃん。階段の踏み板を薄くして存在感を軽くしている。高さによって中庭の見え方が変わる。
3 階の寝室につながる階段を上がっているのは、6 歳になる琴ちゃん。階段の踏み板を薄くして存在感を軽くしている。高さによって中庭の見え方が変わる。

窓を多用して部屋ごとのキャラクターを作る。

 駅から徒歩約5分。建築家の西川日満里さんと坂爪佑丞さんが、商店街近くに10坪の狭小地を見つけたのは、約4 年前。

「小さくても街に近い場所がいいと思っていたので、商業地域で建ぺい率80%まで建てられるこの場所は、ぴったりでした。近くに大きな銭湯があり、ものは街中にたくさんあるので所有しなくてもいい。都市の経験と家が連続する場にしたかったんです」と坂爪さん。スキップフロアの3階建てで2、3階が住居になる。小さな敷地に小さな部屋を積み上げ、空間ごとにキャラクターを持たせながら、どこもが区切りなくつながっているのが特徴だ。

「扉がないので全体が一つの部屋。けれど、高さごとにいろんな場所があり、家族それぞれが快適な居場所を探し、お互いの距離感を保つという考え方です」とは西川さん。

3階の寝室。窓を高い位置に設置して、空だけが見えるようにした。
3階の寝室。窓を高い位置に設置して、空だけが見えるようにした。
2階と3階の中間にある、書斎としても使うサンルーム的な小空間。ここから中庭に出入りできる。
2階と3階の中間にある、書斎としても使うサンルーム的な小空間。ここから中庭に出入りできる。
2階のリビングコーナー。2 階はキッチンも含めて回遊できる作りに。壁は2、3階を通じてラワン合板で仕上げている。
2階のリビングコーナー。2 階はキッチンも含めて回遊できる作りに。壁は2、3階を通じてラワン合板で仕上げている。
コンパクトで機能的なキッチンは全体的に暗めにしているが、タイルは光沢のあるものに。
コンパクトで機能的なキッチンは全体的に暗めにしているが、タイルは光沢のあるものに。

独立した出入り口を持つ1階は西川さんの仕事場になっているが、ギャラリーや店にも転換でき、街へとつながるフレキシブルな役割を持つ。そして2 、3 階の住居をまとめるのは、中庭に向けた大きな窓を中心とした、あらゆる窓の存在だ。

「庭を家の中心に据えようという話から設計がスタートしました。中央に大きな窓を作り、各部屋の個性も窓で作る。キッチンはこもれるよう天井が低く暗めだけれど、隙間の窓から住宅街の景色が望める。リビングのソファに座ると商店街の通りが見えて歩いている人など街の気配が感じられる。3階の寝室は空に近いイメージです。そうすることで各部屋は狭くても、心の中に広がりをつくっていけると考えたんです」と、坂爪さん。西川さんも続ける。

「中庭の窓はどこからも共有できます。同じ窓でも植物を下から見上げたり、上から見下ろしたりなど部屋によって見える風景が変わる。それも空間が小さいからこそできることだと思います。家は長い時間を過ごす場所です。だからこそ、光や植物、街から得られる日常の小さな発見を感じられる場所にしたい。狭いということは、外との距離が近いということ。その良さを生かした暮らしの実験場にしていきたいです」

2 階の一角。後ろの壁は耐力壁だが、中央に寄せることで、部屋全体を見渡すのではなく、視線を間仕切る役目も果たす。
2 階の一角。後ろの壁は耐力壁だが、中央に寄せることで、部屋全体を見渡すのではなく、視線を間仕切る役目も果たす。
1 階部分。仕事場や貸しギャラリーなど、街に開けているので、いろいろな使い方ができる流動的な場所。
1 階部分。仕事場や貸しギャラリーなど、街に開けているので、いろいろな使い方ができる流動的な場所。
左から2 軒目が西川さん&坂爪さんの地上3 階建ての家。商店街からつながる道に面している。
左から2 軒目が西川さん&坂爪さんの地上3 階建ての家。商店街からつながる道に面している。
中庭を除いた延べ床面積は63㎡。そのうち1 階の独立した部屋が10㎡なので、実質53㎡に家族3人で暮らす。
中庭を除いた延べ床面積は63㎡。そのうち1 階の独立した部屋が10㎡なので、実質53㎡に家族3人で暮らす。
PROFILE

西川日満里 坂爪佑丞 建築家

西川さんは共同で建築事務所「ツバメアーキテクツ」を主宰。坂爪さんは別の設計事務所に勤務。この家は二人+ツバメアーキテクツで設計をした。

西川日満里さん、坂爪佑丞さん

photo : Ayumi Yamamoto illustration : Shinji Abe (karera) edit & text : Wakako Miyake

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