LIFESTYLE ベターライフな暮らしのこと。
自分らしく生きるための、住まいのカタチ_02馬と犬と猫と共に、平屋で小さく豊かに。August 11, 2022
「住まい」のカタチが変わると「暮らし」はそれに合わせて変わっていきます。自分らしく生きるための「住まい」についての実例集から、自身のライフスタイルを見直すヒントを探してみませんか。理想をしっかりとイメージし、自宅をリノベーションしたり、建て替えたり、住み替えたりした12組の人々を訪ねた2022年7月発売の特集「住まいのカタチと、暮らし方」より、古賀貴子さんの住まいをご紹介します。
HOUSE FOR CHANGELITTLE HOUSE WITH ANIMALS
PROPERTY DETAILSーKOGA’S HOUSE
- 家族構成ー本人、馬、犬、猫2匹
- 広さー敷地1,073.29㎡(延べ床57.96㎡)
- 築年数ー4年11か月
- 居住年数ー4年11か月
今日も明日もただ"森人"のように暮らす。
地図アプリでは明確に位置が表示されないような、広大な別荘地の林の奥に、古賀貴子さんの家はあった。5年ほど前に鎌倉から栃木県内のこの地に移住、家族とは離れて暮らしている。
インテリアコーディネーターとして長年家作りに携わっていた古賀さんだったが、定年を機にこの先の暮らしについて考え直したそうだ。そうして、今は施設に入る高齢の母と共にこの場所への移住を決意。その10年前に自然の豊かさを気に入って購入してあった土地に家を建てることにした。
「母の『自然の中で暮らしたい』という願いを叶えてあげたかったのです。自然は高齢の母を優しく迎えてくれるだろうと思いました。私も幼い頃から自然が好きでしたし、夫も私のアイデアに寄り添ってくれたんです」
オーダーして建てたのは、つつましやかな平屋。無垢の木材がふんだんに使われ、山小屋のような佇まい。素朴で美しい存在感を放ちながら、立つ。
「もうたくさんの荷物は必要ないと思って、多くを手放してからここへ来たから、小部屋が2つにLDKと納戸があればじゅうぶんだったんです。あれこれ飾るのも性に合わなくて、本当に必要なものと好きなものだけ。シンプルなものです」
「住まいも暮らしも小さくていい」と古賀さんが語るのにはもうひとつ、ワケがある。愛馬、グレースアローンの存在だ。彼女は古賀さんの小さな家の隣にある専用の小屋に住んでいる。
「以前から馬が好きで20年ほど前から趣味で馬に乗っていたんです。そんなことからフランスのロワール地方などに馬を見に出かけることがたびたびありました。ヨーロッパでは貴族であろうと庶民であろうと馬や動物と暮らしている人が少なくなく、馬の世界が自然と日常に入り込んでいます。そんな暮らしの美しさに感銘を受けました」
こちらへ来て本当に偶然の縁で後の愛馬に出合う。しっかり調教はされているが気の強い女のコだと聞いて心惹かれ、家族に迎え入れた。
「家が小さいおかげで空いていた土地を放牧場にし、厩も作って。その日から私の暮らしは泥と藁にまみれ、今まで以上にシンプルになりました」
端的に言えば日の出とともに起き、日の入りとともに一日が終わるような生活。馬に犬、猫もいるから彼らのリズムに合わせて動きが決まる。
「炊事、洗濯、掃除と馬との散歩に動物たちの世話の繰り返し。他にボロ(馬糞)を肥料にとやってくる農家の方や、馬の餌にと野菜の余りを持ってきてくれるとうもろこし農家さんとのやり取りがあるくらい。やることの種類は少ないけれど、案外重労働で、すぐに夜がくる。まるで"森人"です。だから家は食べて寝て寛げる場所があり、動きやすく、必要な道具が並んでいればいい」
馬との暮らしに合わせて整えていった家は「ナチュラルさと偽りのない美のバランスが大切」とフランスのアンティークと木製、鋳鉄、リネンをアクセントにした片田舎風情。薪ストーブで少しすすけた壁と土の色がついた木床が日々の証し。
「無駄をなくして暮らしていくと、夜に飲むテーブルワインが本当においしい。『明日もまた皆で今日と同じふつうの一日を過ごせますように』って、ベッドに入るときに願うのはそれだけです」
古賀貴子 主婦
山登りも趣味だという山派。乗馬スタイルは馬の自然な動きを尊重する”ウェスタン”で、鞍もウェスタン。自身もジーンズなどの普段着で馬に跨る。
photo : Kazumasa Harada edit & text : Koba.A