FOOD 食の楽しみ。
文筆家・ツレヅレハナコさんのお取り寄せ。
“おいしい”の連鎖を楽しむ。 料理上手たちの、お取り寄せのある暮らしJanuary 21, 2023
2020年12月20日発売の本誌特集は『真似をしたくなる、お取り寄せ』。料理家をはじめ食の分野で活躍する人たちは、どんなふうにお取り寄せを使いこなしているのだろう。 味わいはもちろんのこと、作り手や、ともに分かち合う仲間との交流も大切に。身近で手に入る食材も上手に組み合わせながら日々の食卓を豊かに楽しむ6人に、おすすめの取り寄せリストと料理を教わった企画「料理上手たちの、とっておきのお取り寄せのある暮らし」から、ここでは文筆家・ツレヅレハナコさんを紹介します。
日常のアップグレードと 仲間と分かち合うためと。
酒のアテからご飯のおかずまで、自身のお取り寄せリストを紹介した本を出版している文筆家のツレヅレハナコさん。
「私の中でお取り寄せは2種類あって、一つは自分の日常のためにするもの。もう一つは誰かのためにするもの。前者は普段の自分の生活を豊かにしてくれる、本当に好きなものを食べたり飲んだりできるという日常のアップグレード。後者は自分が楽しいと思ったり、おいしいと
思うものをみんなでシェアして分かち合う喜びを享受するため」
そもそも棲み分けが違うので自ずと頼む内容も変わってくるという。例えば、調味料や野菜は自分のため。
「土佐野菜は、高知の食文化が大好きなご縁で取り寄せていますが、素朴な野菜がたくさん入ってて、なんだかホッとする詰め合わせ。私は東京出身なので実家から野菜が送られてくる経験がないけれど、きっとこんな感じなのかと疑似体験できる。自分用にストックしておきたい代表格としては『ナッラマナム』のカレー。大阪にあるスパイス料理店で、日本人の若者二人でやっています。『いちじくと牛肉』や『春菊と鶏肉』などオリジナリティあふれる組み合わせが魅力でよく通ってましたが、冷凍便で通販していることを知って、それ以来常備するように。忙しい昼時に重宝していますね」
一方、一人では食べ切れないものを仲間たちを集めて、みんなでシェアしたり、それぞれがお取り寄せを持ち寄るという会もよくやっている。
「『柿木畜産』の短角牛はそれこそ集まりに伺ったとき、家主が大量注文してくれたもの。本当においしくて、以来、牛肉で唯一取り寄せている生産者。私が頼むときはかたまり肉をワイン煮込みにしたり、今日のようにハンバーグを頼んだり。ワインのお供には『エソナ』の鶏のタルタルとミルクチョコレートレバーの瓶詰。『パンと』のパンとセット販売していて、一緒に届くのですがパンとの相性も良くて、めちゃくちゃおいしい。でもひと瓶は空けられないから、誰かを招くときに注文します」
パーティに欠かせないアルコールもお取り寄せすることが多い。お酒が大好きなツレヅレさんがいつも燗で飲んでいるのは、取材で訪れ、感銘を受けたという京都・丹後にある酒蔵、『木下酒造』の玉川の特別純米酒。
「ここで扱っているほとんどのお酒が燗推しという骨太な日本酒なんです。これに新潟の老舗『千年鮭きっかわ』の鮭の酒びたしを。熟成された濃厚な鮭で、私的には日本酒最強のアテです」
個人的なものをオーダーする喜びはもちろんあるが、それに増してお取り寄せをシェアすることはいろいろなメリットを感じているとツレヅレさん。
「それは味を分け合うだけでなくて、知らなかった情報を分け合うという意味もあります。それから、お取り寄せは送料がかかるものだけど、現地まで行く時間と交通費を考えたらむしろ安い。集まったときに割り勘して、それぞれが頼んだものを分け合って、少しずついろんな味
を食べられて、さらに持ち帰ることまでできると考えたらいいことしかない」
さらに、料理好きが集まると、みんなで作りながら食べたり、飲んだり。そんな時間も楽しいという。
「それって、レストランで食べるのとはまた違った良さがありますよね。食いしん坊仲間たちと楽しいことをシェアしてると、巡り巡って自分にもいいことがあると思っていて。『こないだお取り寄せしてくれたから、今度は私が持っていこう』とおいしいものが我が家にやってくる(笑)。お取り寄せがつないでくれる嬉しい連鎖が生まれているんです」
ツレヅレハナコさんの取り寄せリスト
ツレヅレハナコ
Turedurehanako
食と酒と旅を愛する文筆家。著書に『女ひとりの夜つまみ』(幻冬舎)、『食いしん坊な台所』『女ひとり、家を建てる』(ともに河出書房新社)、『ツレヅレハナコの愛してやまないたまご料理』(サンマーク出版)、『ツレヅレハナコのお取り寄せ』(立東舎)など多数。
photo : Tetsuya Ito edit & text : Chizuru Atsuta