MUSIC 心地よい音楽を。
鎌倉『ポンポンケークス ブールバード』の"モーニングDJ"が選んだ、爽快な朝と、気怠い朝の音楽。November 17, 2023
2023年10月20日発売の『&Premium』の特集は「毎日を気持ちよく過ごす、100のこと」。ゆったり過ごす休日はもちろん、仕事などに勤しむ平日でも、気持ちをふっと緩めて気持ちよさを感じられるような、ベターライフの秘訣を探りました。ここでは、寒い冬の朝を心地よくしてくれる、朝の音楽をDJの矢澤和久さんが教えてくれました。
寒い冬の朝は無理をせずに、 気分と体調に合う音楽で整える。
慌ただしい朝の時間。テレビの時計に気を取られるより、レコードに針を落とし、気分に合った音楽で心と体を起こしたい。盤を裏返す手間もいいリズムになって、暮らしを機嫌よくスタートできるはず。鎌倉『POMPONCAKES BLVD.』でモーニングタイムにDJを担当する矢澤和久さんに、朝を快適に過ごせる音楽を選んでもらった。
「清々しく晴れた日には、やっぱり爽快な音楽で目を覚ましたい。しかし、問題なのは寒い季節。どうしても起きるのが辛くなってきますよね。個人的には無理をせずスロウで、少し気怠い音楽を聴きながら、徐々に目を覚ましていくのがベストだと思っています」
季節や体調の変化に抗わず、自然に体を整えていく。そこで「目覚めのいい朝」「なかなか起きられない朝」の2テーマでアルバムを選んでもらった。フォーキーなファンキーロックからブラジル音楽、新しいUKのR&Bまで。新旧ジャンルはさまざまだが、続けて聴いても違和感がなく心地よい。
「国籍や音楽性を超え、素晴らしい音楽をセレクトした『SuburbiaSuite』や『FreeSoul』から、僕自身は大きな影響を受けています。今回の選曲は先人たちが愛した定番に加え、同様のエッセンスがあるマニアックなもの、アップデートした音楽も選びました」
「目覚めのいい朝」に聴きたい4 枚。
Bicicleta / Boca Livre
ブラジルのコーラスグループが、1980年に発表したセカンドアルバム。とにかく軽快なリズムとメロディは、爽快な一日の始まりにぴったり。「アルバムタイトルはポルトガル語で自転車を意味し、ジャケット中面ではメンバー全員でサイクリングをしている写真が使われています。冒頭の『Um Canto De Trabalho』は、ヨーロッパのDJにも人気」
Suzume / J.Lamotta すずめ
須永辰緒との共演で、日本でも話題のイスラエル出身のシンガー・ソングライターが、2019年にリリースしたセカンドアルバム。「ジャケからして目覚めがいいんですが、内容もまた素晴らしい。エリカ・バドゥやJ・ディラなど、'90年代のR&Bやジャズヒップホップに近いものがある。作詞作曲、トラックメイキングもするそうで、今後にも期待」
The Fifth Avenue Band / The Fifth Avenue Band
'60年代にNYのグリニッジ・ビレッジで結成されたセッションバンド。「後の有名ミュージシャンたちが夜中に集まってセッションしたというライブハウス『ナイト・アウル・カフェ』から生まれた作品。跳ねたリズムの『One Way Or The Other』は最高ですが、少しブラジル色のある『Eden Rock』も、フォーキーでいいですね」
Fint Såsom Snus / Ulla & Ammie & Ove Linds Orkester
スウェーデン・ストックホルム出身の双子デュオによる、1970年の上質なソフトロック。「西新宿にあるヨーロッパのプログレ専門店で発見した一枚。アルバム全体的に、キュートなボーカルとビートが炸裂していて、素晴らしい。なかでも、ロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズのカバー『Love So Fine』がとにかく出色の出来」
※紹介している4枚から、3枚の楽曲をまとめたプレイリストです
「なかなか起きられない朝」に聴きたい4 枚。
Toninho Horta / Toninho Horta
ブラジル・ミナスジェライス出身のギタリスト兼シンガーのトニーニョ・オルタが、1980年に発表したセカンドアルバム。「アップテンポだけど上がり切らず、抑制が利いている。そこに芸術性を感じるんです。軽快さのなかに、どこか浮遊感のあるような音楽。パット・メセニーも影響を受けたというフワッとする響きが、気怠い朝によく合うんです」
Hirth From Earth / Hirth Martinez
ハース・マルティネスのデビュー作は、その才能に惚れ込んだザ・バンドのロビー・ロバートソンが自らプロデュースとリードギターを担当。「アメリカのルーツ音楽を取り入れた、ゆっくりした作品。有名な『Altogether Alone』は、フォークだけど、少しブラジル的なテイストもある大名曲。宇宙人との友好をテーマにした歌詞もおもしろい」
Acabou Chorare / Novos Baianos
ブラジルのバイーアで共同生活を送る若者たちによって結成されたグループ。1972年のセカンドアルバム。「サンバをベースに、ロックやフォークなど、雑食的にさまざまな音楽を消化していて。伝統的なリズムと若者の感性との融合に成功しています。祭りの後の寂しさ、ブルーな感じがうまく反映されているところも、ブラジルらしくていい」
Mother / Cleo Sol
イギリスのジャズマン一家に生まれ育ったシンガー・ソングライター。ユニットSAULTのメンバーとしても活動している。「ピアノの弾き語り『Don't Let Me Fall』は往年のサウンドを思わせます。また、リズムが強いR&Bもうまい。しかし、彼女の独特な、アンニュイなボーカルが乗ることで、どんな曲でも新鮮に聴こえてくる」
※紹介している4枚から、3枚の楽曲をまとめたプレイリストです
PROFILE
矢澤和久 Kazuhisa Yazawa DJ
1974年、神奈川県生まれ。地元の鎌倉や都内で20年以上にわたってDJ、選曲家として活動。鎌倉・梶原のケーキショップ『ポンポンケークス ブールバード』にて、毎週土曜のモーニングタイムを担当して6年。店のコンセプト“Traditionallynew.”に合わせた選曲に、ローカルのファンも多い。
photo : Jun Nakagawa edit & text : Katsumi Watanabe