BOOK 本と言葉。

『庭文庫』が届けるベターライフブックス。今週の本『多喜さん漫筆 詩人井上多喜三郎のこと』July 17, 2025

This Month Theme心を鎮める「日本の旅」へ誘う本。

Book of the Week『多喜さん漫筆 詩人井上多喜三郎のこと』外村彰 著(龜鳴屋)

『庭文庫』が届けるベターライフブックス。今週の本『多喜さん漫筆 詩人井上多喜三郎のこと』

詩がお好きな方でも、井上多喜三郎という名前を知る方は、少ない。この本は、石川県金沢市にて、勝井隆則さんという方がおひとりで営む出版社『龜鳴屋』(かめなくや)から刊行されているものです。本書は“多喜さん”こと、井上多喜三郎を深く愛する外村彰さんが、多喜さん縁の地などを旅しながら、多喜さんの詩のことや、多喜さんの暮らし、その時代の詩人たちや日本のことなどを、思いつくままに、朗らかに綴った名随筆です。あの時代の日本の風合いや空気すら感じられる、素晴らしい詩と旅のエッセイ本。僕はこの本を読むと、どこかの田舎町にふらりと旅に出て、その土地の古びた飲み屋や銭湯などに入り、「ああ、古き良きものよ」としんなりと心鎮まる時間を持ちたくなります。多喜さんの書く詩がまた、どこにでもありそうな、ささやかな日常の光景を、そっと言葉にして見せてくれるようなものが多いのです。どこにでもきっと、詩になるものがある。どんなささやかな日々のなかにでも、美しいものがある。多喜さんの詩、外村さんの随筆を読む時、そんな、この日本の日常風景と、そこを生きる人間たちの美しさに、そっと気づかされ自分の住む町でも、見知らぬ町でも、ふらり、旅をしたくなる。日常は旅になる。そう思わせてくれる、大切な1冊です。


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岐阜県恵那市の木曽川の高台にある、築100年以上の古民家で泊まれる本屋を営む。「すべての人にことばの森を開く」という思いを大切に、新刊本、古本ともに取り扱っている。宿は1日2組限定。静かな環境で本と対峙する豊かな時間を届けている。出版レーベル 「あさやけ出版」も運営している。住所:岐阜県恵那市笠置町河合1462-3 営業時間:金土日月13:00〜18:00 定休日:火・水・木 詳細はInstagram(@niwabunko)より確認を。

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