『庭文庫』が届けるベターライフブックス。今週の本『おやすみ神たち』July 03, 2025

This Month Theme心を鎮める「日本の旅」へ誘う本。

Book of the Week『おやすみ神たち』谷川俊太郎 詩　川島小鳥 写真（ナナロク社）

写真家の川島小鳥さんが撮った、アジアの日常の写真たちに、詩人の谷川俊太郎さんが、「タマシヒ（魂）」をテーマに詩を書き、編まれたものが、この写真詩集です。川島さんの写真を見ていると、それがどこか見知らぬ異国の風景であることはわかるのに、同時に、僕がいるこの場所や時間と地続きにある、ある名づけようもない「無名の場所・無名の時」をも、そこに透かし見るような心地がします。それぞれの固有性を軽やかに超えながら、この世の向こう側にまで届きそうな、穏やかで軽やかな目線。まなざし。谷川さんの詩がまた、地上の存在たちの裏側を透かすように、存在を成り立たせてあるところの、「タマシヒ（魂）」を語るがゆえに、さらにその彼岸性のようなものが、写真に力を与えます。その彼岸性、「無名の時・無名の場所」のことを、この世に生きているものたちは実のところ、「タマシヒ（魂）」としてはもう知っているのだと、僕は思います。日常のなかに隠されたその時・場所がささやかに薫り、露わになる。僕にとっての本書の魅力は、そこにあります。