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極私的・偏愛映画論『ムード・インディゴ~うたかたの日々~』選・文/篠崎恵美(『edenworks』フラワークリエイター) / April 29, 2018

This Month Theme花を愛する人が描かれている。

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愛する人に花を贈るというシンプルな行為が、想いを伝える唯一の方法。

 ミシェル・ゴンドリー監督『ムード・インディゴ~うたかたの日々~』は、詩人、作家、ジャズ・トランペット奏者、歌手など多才な顔を持つフランスの作家ボリス・ヴィアンの青春小説『日々の泡』が原作。幸せな日々が泡のように人生は脆く儚く、愛に溢れるロマンチックストーリー。

 財力があり何不自由なく生きてきたコランと、純粋なクロエが素敵な出合いをし、やがて結婚。幸せな新婚旅行の最中に、クロエは肺に睡蓮の花が咲く奇病にかかり、日に日に弱っていきます。「たくさんの花でクロエを埋め尽くせば、クロエは生きられる」と、コランはたくさんの花を絶えずクロエに贈り続けます。病を取り除く働きからか、贈られた花々はみるみる弱って行き枯れてしまいます。その描写が、とても美しく、儚くも強いパワーを感じます。

 なかでも、私はコランがクロエの為に花を買うシーンがとっても大好きで、花の名前を言うと花畑が機械的に入れ替わるのもワクワクが止まりません。この映画は、ファンタジーとリアルを誇張しているシュルレアリスムが印象的な作品。

 ”愛の象徴である花は、想いの形”。この映画のように、愛する人に花を贈るというシンプルな行為は、想いを伝える唯一の方法なように思います。私は花を愛する人が、人のことも思いやれる、優しさに満ちた世界へ変えると信じています。この映画からそんなシンプルだけど、なかなかできない、忘れかけていた大切なことを思い出しました。

 愛する人と観て欲しい、人生の物語です。

illustration : Yu Nagaba
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「たくさんの花で埋め尽くせば、クロエは生きられる」。花で治療するという感性が素晴らしい。花が人を殺してしまう存在でもあり、人を治療する存在であることを表現していて、花の仕事をする者としてとても考えさせられる。ただ私は、花で満たされた世界がどんなに幸せだろうと、日々夢を見ている。ファンタジーなのに、どこかリアルで、ピュアな愛情に満ちている作品。
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Title
『ムード・インディゴ~うたかたの日々~』
MOOD INDIGO
Director
ミシェル・ゴンドリー
Screenwriter
リュック・ボッシ
Year
2013年
Running Time
131分

『edenworks』フラワークリエイター 篠崎 恵美

栃木県生まれ。2009年に独立し『edenworks』を立ち上げる。アパレルブランドやショップとのコラボレーション商品の展開やディレクションなど、幅広く活動。さまざまなアーティストとコラボレートし、写真、ミュージックビデオの制作にも携わる。週末だけにオープンする花屋『edenworks bedroom』、ドライフラワーショップ『EW. Pharmacy』が人気。

edenworks.jp

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