Water 南アルプス「水の山」通信

山梨・北杜より「水の山」が育んだ、香り高いそばを味わう。vol.2 / December 19, 2016

打ちたてのそばに包丁が入る。地産地消にこだわり、そば粉はもちろん醤油、天ぷらの野菜も地元産を使用。

南アルプス山麓の鳥原地区、雄大な八ヶ岳を借景にした場所で、週末と祝日のみに営業する〈名水そば〉が北杜市白州町にある。地元の名人にそば打ちを習った人たち13人で運営しているという。この日のスタッフは代表の佐藤英道さん、和田信仁さん、大塚和子さん、澤田憲一さんの4人。そば店の運営のほか、そば打ち講習会や体験会などを行う。みな講習会でそば打ちを学んだが、その仕事への取り組みはプロも顔負けだ。

〈名水そば〉で打つのはつなぎ2割、そば粉8割の二八そば。地元産そば粉をふるいにかけるところから澤田さんが実演してくれた。きめ細かなそば粉に、水をやさしくかけていく。水加減はと尋ねると、横で見ていた和田さんが「手でそば粉と会話しながら決めていくんですよ」と教えてくれた。白州の水はそば打ちに適しているとも言う。「難しいことはわからないけれど、まろやか。よその町のそば屋さんも、白州の水を汲みにくるほどなんですから」

そばは打つのもだが、茹でるのも難しい。沸騰した湯の中に和田さんがそばを入れる。茹で上がったそばを水、氷水で順に締め、内外の茹で具合を均一にする。大塚さんが揚げてくれた天ぷらと一緒に、そばをいただく。挽きたて、打ちたて、茹でたてのそばは口の中に華やかな香りが広がる。それを伝えると「なによりの言葉」と和田さんが微笑む。「水の山」が育んだそばは、この地を愛する人たちによって、香り高く磨かれていた。


今月の人/そば職人

佐藤英道

Hidemichi Sato 佐藤英道

取材に応じてくれた3人と。左から和田信仁さん、佐藤英道さん、大塚和子さん、澤田憲一さん。全員が県外からの移住者。そば作りを通して仲間になり、土日祝だけの店を切り盛りしている。冬季休業中、3月18日営業再開。
名水そば ☎0551−3‌5−5152
photo : Koh Akazawa text : Hideki Inoue edit : Akio Mitomi

Pick Up 注目の記事

Latest Issue 最新号

Latest Issuepremium No. 131使い続けたくなる、愛しいもの。2024.09.20 — 930円