使いやすく、片付けやすい、心地いい台所の仕組み。

料理家・作家、樋口直哉さんの、 無駄なくスムーズに料理するための台所。後編:使いやすく、片付けやすい、心地いい台所の仕組み。December 13, 2022

科学的かつ論理的思考で料理する料理家と、ズボラでも掃除を楽に楽しむ術を体得した整理収納コンサルタント。セオリーに基づいて整頓されたふたりの台所から、使い勝手をよくする仕組みを学ぶ。

Tips 08 オーブントースターは サーモスタット付き。

サーモスタットとは温度制御機能をさす。付いていれば高出力でオーブン的役割をじゅうぶんに発揮できるトースターだということ。「トースターだけで野菜や肉焼き、焼き菓子などができる。洗い物が減るので、もっと活用すべき」。〈バルミューダ〉製。

 
TIPS08 オーブントースターは サーモスタット付き。料理家・作家、樋口直哉さんの、 無駄なくスムーズに料理するための台所。

Tips 09 計量スプーンは多数用意で ”都度洗い”をなくす。

「計量スプーンは同じ容量のものを複数本ずつ持つのがおすすめです。料理中に同じスプーンを毎度洗いながら繰り返し使うのは時間と労力の無駄。洗わずに再度使うのは本末転倒。味見にも使えるし、多めに持っていて困ることはありません」

 
TIPS09 計量スプーンは多数用意で ”都度洗い”をなくす。料理家・作家、樋口直哉さんの、 無駄なくスムーズに料理するための台所。

Tips 10 ザルはタワシとセット。 足のないタイプが清潔。

洗いにくさや汚れに悩まされがちなザル。「目詰まりはタワシでこするのが早道です。足が付いていないタイプを選ぶと汚れがたまるストレスは減ります」。パンチング仕様の〈柳宗理〉は野菜の水切り用、メッシュ仕様の〈PRO SERIES〉は洗米用に。

 
TIPS10 ザルはタワシとセット。 足のないタイプが清潔。料理家・作家、樋口直哉さんの、 無駄なくスムーズに料理するための台所。

Tips 11 パワー系ブレンダーには どんどん頼る。

細かく刻む、漉すといった調理の中でもいっそう細かい工程は、ブレンダーに任せるのが樋口流。「例えば〈バイタミックス〉のものは種や氷を即座に粉砕するほどパワフルです。あっという間に食材がクリームやスープに様変わり、繊維も残りません」

 
TIPS11 パワー系ブレンダーには どんどん頼る。料理家・作家、樋口直哉さんの、 無駄なくスムーズに料理するための台所。

Tips 12 省スペースで畳んでしまえる 水切りマットが万能。

火口とシンクの間のスペースを少しでも広く確保するためには、思い切って水切りかごを手放すのも一手。「その代わりに使っているのが水切りマットです。水たまりに悩まされることもなく、しかも早く乾く気が。使用後は畳んでしまって、おしまい!」

 
TIPS12 省スペースで畳んでしまえる 水切りマットが万能。料理家・作家、樋口直哉さんの、 無駄なくスムーズに料理するための台所。

Tips 13 保存容器は電子レンジOK タイプが使いやすい。

蓋が開きづらくてイライラしたり、勢いで開けて中身をこぼしたり。便利なはずの保存容器が時に台所仕事の敵になる。「僕は電子レンジOKタイプ一択。小さな空気孔があるので、蓋がサッと開くからです。その分、保存力は弱い。何を優先するかですね」

 
TIPS13 保存容器は電子レンジOK タイプが使いやすい。料理家・作家、樋口直哉さんの、 無駄なくスムーズに料理するための台所。

無駄なくスムーズに料理する。

家は賃貸。〈YAMAHA〉のシステムキッチンは備え付けだった。そもそも大ぶりだが、それでもスペースを確保するため、水切りかごはなし。塩以外の調味料はカウンター上に出しっぱなしにしない。
家は賃貸。〈YAMAHA〉のシステムキッチンは備え付けだった。そもそも大ぶりだが、それでもスペースを確保するため、水切りかごはなし。塩以外の調味料はカウンター上に出しっぱなしにしない。
 

片付け7:調理3という
台所時間を変える道具と配置。

 以前、料理とロボティクス技術をどう融合させるかというプロジェクトに携わったときにわかったことがあります。なんと人は料理にかける時間のうち、7~8割を片付けに充てているそうです。つまり本来の目的であるはずの調理をしている時間は3割しかない。料理を楽しむなら、調理に集中できる時間が多いほうがいいに決まっているのに、こんな無駄なことはありません。
 例えば昨晩、夕食の準備中、食材が変わるごとにまな板を水で流しませんでしたか? 保存容器からうっかり中身をこぼしませんでしたか? でもまな板を2枚用意、蓋を開けやすい保存容器を選んでいたら、避けられた話です。片付け以外に肉や魚を切るのに難儀するなんてのも、無駄な時間。包丁を研いでさえいれば、スムーズに仕事が進みます。それに食材の切り口がきれいなら、細胞が壊れないので料理もおいしい。
 見せる収納は素敵ですが、理に適ってもいます。特に頻繁に使うボウルと皿の収納は”扉はなし”がベスト。できれば作業はロスなくワンアクションでと考えると、自ずと理想の配置や道具選びの基準が見えてきます。道具が握りやすい、軽い、熱伝導がいい、壊れにくい、汚れがたまらない……といったことも、調理時間や片付けやすさに直結しますから。水滴や焦げがついたままのフライパンなんて最悪です。本来の機能を発揮できなくなってしまいます。
 台所が整頓されていれば料理はおいしくなります。雑然とさせないのはもちろん、道理を知って筋道をつくることが大切です。

 

樋口直哉 Naoya Higuchi 料理家・作家

料理を科学的に分解、成分の効果や道具の機能性などを実験、調査するのが趣味。群像新人文学賞受賞、芥川賞ノミネートなど作家としての顔も持つ。著書に『新しい料理の教科書』(マガジンハウス)。

photo : Yuya Shimahara edit & text : Koba.A

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