台湾スイーツ食べ比べ

春節に味わう、縁起の良い中華式餅菓子。【&Taipei 台湾スイーツ食べ比べ 】February 17, 2025

  旧暦(農暦)で祝う台湾のお正月。この時期になると、市場では「年糕」と呼ばれる伝統菓子を目にする機会が増える。これは一年の成長を意味する「年高」と同じ発音なため、縁起物の扱いを受け、神様や先祖に供えた後は食卓でいただくのが習わしとなっている。種類は豊富だが、よく目にするのは台湾語で「甜粿」と呼ばれるもの。これはもち米をすり潰した液体状のものに小豆や赤砂糖を加えて蒸す。粘り気があり、甘味も強い。これに衣をつけて揚げて食べるおやつもある。また、肉そぼろや干しエビなどが入ったおかず系は「鹹年糕」と称される。さらに戦後に中国大陸から渡ってきた人々が持ち込んだ年糕は台湾土着のものと味や食感が大きく異なる。今回は台湾式と上海式を食べ比べしたい。
春節に味わう、縁起の良い中華式餅菓子。【&Taipei 台湾スイーツ食べ比べ 】

弾力性のある上海式年糕が味わえる老舗。

 迪化街にある中華点心の専門店。戦後に中国から渡ってきた初代が1947年に南門市場に創業。2016年に3代目となる元デザイナーの鄭匡佑・任佳倫夫妻が新ブランドを立ち上げて現在に至る。洒落た店構えが目を引き、若者や外国人観光客もよく訪れる人気店だ。ここの年糕は上海式で、台湾式のものとは異なり粘り気がない分、独特な歯ごたえが感じられる。白砂糖を用いたものと赤砂糖を用いたものとがあり、どちらも甘さは控えめで、キンモクセイの花が入っている。店では台湾茶と2種類の点心のアフタヌーンティーセットが定番で、写真のように年糕と看板商品である「鬆糕」(蒸しライスケーキ)を組み合わせられる。なお、南門市場にある本店では台湾式の「甜粿」も販売している。

合興壹玖肆柒
フーシンイーチョウスーチー

台北市大同區迪化街一段223號 ☎02‒2557‒8060 10:00~19:00 無休、旧正月休 1個45元、セットの場合は250~280元。

合興壹玖肆柒フーシンイーチョウスーチー
春節に味わう、縁起の良い中華式餅菓子。【&Taipei 台湾スイーツ食べ比べ 】

米食品の専門店による新感覚の台湾年糕。

  MRT大橋頭駅から少し北側に進んだ路地にある『林貞粿行』。3代目の店主である林凡凱さんによれば、この一帯はかつて「粿仔街」と呼ばれ、米食品を作る工場が三十数軒もあったというが、現在残っているのはここ一軒のみ。もともとあった工場は都市開発により郊外へと移転し、現在は建て替えられたビルの中でカフェとして営業。手作りの大根餅や芋粿巧(タロイモ味の蒸し餅)、年糕などを供しており、写真の「年糕三重奏」は「若い世代にも味わってもらいたい」と特別に開発したもの。小豆入り、キンモクセイ入り、黒糖味にドライリュウガンを入れた3種類があり、抹茶やピーナッツの粉、練乳で食べるスタイルとなっている。適度な弾力性があり、やさしい甘さなのも嬉しいところ。

林貞粿行
リンツェンクオハン

大稲埕概念店/台北市大同區迪化街二段172巷 12‒2號 ☎02‒2598‒2956 11:00~17:30 月火休 年糕三重奏は160元。大根餅もおすすめ。

林貞粿行
リンツェンクオハン

文/片倉真理 
※この記事は、No. 135 2025年3月号「&Taipei」に掲載されたものです。


台北在住ライター・コーディネーター 片倉 真理

1999年から台北に暮らす。台湾に関する書籍の執筆、製作のほか、雑誌のコーディネートなども手がける。台湾各地を隈なく歩き、料理やスイーツから文化、風俗、歴史まで幅広く取材。著書に『台湾探見』、共著に『台湾旅人地図帳』(共にウェッジ)、『食べる指差し会話帳』(情報センター出版局)など。

instagram.com/marikatakura

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