季節の花と緑を贈る、12か月の歳時記。

ミモザ、ムスカリ…。平井かずみさんが選ぶ、2月の贈り花。February 02, 2025

植物も開く準備を始め、早春の訪れを感じる。

立春がやってくる2月。梅の花がほころび、沈丁花の香りが漂い、ウグイスやメジロなどの野鳥もさえずりを始める。大雪が降ったり、冷え込む日が続いたりなど体感では真冬だが、よく観察すると、春の気配はあちこちにあらわれている。贈り花も春にフォーカスしたものを選びたい。

 


クリスマスローズ
Helleborus

Consolida ajacis
うつむいて咲く、可憐な姿が人気。
科名/キンポウゲ 原産地/ヨーロッパ、地中海沿岸。うつむいて咲く様子にひたむきさを感じる。ローズという名前はついているが、バラとは違う種類。シックな色合いがインテリアに馴染みやすいことから、贈り花としてのニーズも高い。「花の少ない時季に出回る、本当にありがたい存在です。日本では春咲きのオリエンタリスがスタンダードで手に入りやすいと思います。育てている人も多いのでは。ランチに招かれたときなどに、お庭の景色をお裾分けするようなさりげなさで渡したい」
 


ミモザ
Acacia dealbata

Consolida ajacis
黄色く丸い小花が枝全体に開花。
科名/マメ 原産地/オーストラリア。南フランスではコートダジュールを中心に、毎年2月にミモザ祭りが開催される。ミモザと春の花で飾り立てた山車が街をパレードしたり、ミモザが咲き誇る街道を散歩できたり。鮮やかな明るい黄色から、黄金と太陽の花といわれている。「春の花が黄色いのは、虫が好んで見つけやすい色だからといわれています。それは人間も一緒で、黄色くモコモコと咲いている花を見るとワッと嬉しくなります。春が来たよ!というのを一番にお届けできる花です」
 


ラナンキュラス
Ranunculus asiaticus

Consolida ajacis
ドレスをまとったような、麗しさ。
科名/キンポウゲ 原産地/南西アジア、ヨーロッパ。幾重にも重なった花びらが優美な印象を与える。花言葉のひとつは“お祝い”。ほかにも“とても魅力的”“合格”などポジティブな言葉が並ぶ。大事な試験を控えている人や、お祝い事のある人に贈ると喜ばれそうだ。「薄紙のような花びらが本当に愛らしいんです。主役になる花なのでこれだけでもいいし、種類や咲き方にバリエーションがあるので、別の花と合わせやすいのも魅力です。そして球根なので長持ちする上、扱いが簡単なので祝い花に」
 


ムスカリ
Muscari

Consolida ajacis
甘い香りがする花は、球根つきがおすすめ。
科名/ユリ 原産地/地中海沿岸、南西アジア。茎の先端にブドウの房のような青紫色の小さな花をつける球根植物。約6万年前のイラクの遺跡に、ネアンデルタール人が埋葬時にムスカリを手向けた痕跡があるという説も。はるか昔からヒトのそばに寄り添っていた花でもある。「最近は球根がついたまま出回っているものもあるので、それを数本麻ヒモで結び、薄紙で優しくラッピング。ジャムの空き瓶などにスポッと入れてお渡しすると、水を入れてそのまま生けられるし、かわいいと思います」
 


ヒヤシンス
Hyacinthus orientalis

Consolida ajacis
早春を感じる、爽やかな香りを贈る。
科名/ユリ 原産地/地中海沿岸、北アフリカ。水耕栽培をする人も多いポピュラーな花で、青葉を思わせるような爽やかな芳香を放つ。球根つきで出回ることも多いので、長く楽しんでもらいたい場合は、そちらを贈りたい。水に浸けておくだけで根がどんどん伸び、下から花が咲いていく。「一本差し上げるだけでも見た目にボリュームがありますし、馴染みも深いので、気軽に贈るのにちょうどいい花です。私は紫が好みなのですが、白や黄色、ピンクなどもあるので、相手の好きな色をチョイスして」

平井かずみ Kazumi Hiraiフラワースタイリスト

草花が身近に感じられる、暮らしに根付いた日常花を提案。東京・恵比寿のアトリエ「皓SIROI」を拠点に、日本全国で花の教室をはじめとしたワークショップや展示を開催。著書に『あなたの暮らしに似合う花』『花のしつらい、暮らしの景色』(ともに扶桑社)など。

illustration : Shinji Abe (karera) edit & text : Wakako Miyake
参考文献:『花屋さんで人気の469種 決定版 花図鑑』(西東社)、『花の名前、品種、花色でみつける 切り花図鑑』(山と溪谷社)

Pick Up 注目の記事

Latest Issue 最新号

Latest Issuepremium No. 135部屋と心を、整える。2025.01.20 — 960円