モダン建築ディテール探訪

テーマ 住宅建築におけるモダンさ。-岡田良子さんがガイドするモダン建築-モダン建築ディテール探訪 VOL.01 / July 19, 2021 /〔PR〕

2021年9月25日より京都市京セラ美術館にて開催される展示「モダン建築の京都」に合わせて、在住のクリエイターやショップオーナーたちが、街に点在するモダン建築の”細かいところ”を紹介するこの連載。第1回は、本屋『大喜書店』を運営する建築家の岡田良子さんが、当時の住宅に新しさをもたらした6つディテールを巡ります。

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当時の人を驚かせたであろう
それまでになかった意匠を見る。

『モダン建築の京都』展で選定された、京都に現存する100のモダン建築。岡田さんが切り取ったのは明治・大正・昭和と建てられた時代は異なりつつも、当時の人を驚かせたであろう新たな意匠を取り入れた住宅建築だ。「既成概念にとらわれず和洋折衷を取り入れた『新島旧邸』から始まり、『本野精吾邸』のコンクリートブロック、『堀川団地』のキッチン、窓に障子をあしらった『カトリック桂教会』と、どれも造形的にも完成されています。今見ても、まったく古さを感じさせないのがおもしろい」。現代のライフスタイルのルーツをひもとくような、建築探訪が待っている。

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住み手の強い意志が伝わる、 「新島旧邸」の居間の襖とドア。

同志社の創立者、新島襄の私邸は明治11年の竣工。「襖の下に引き出し、横に扉という構成に新島の意向を感じます。玄関も簡素で床の間もなく、部屋の格に差のないフラット感も当時は画期的だったはず」

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数寄者らしい細部までのこだわり、 「茂庵(もあん)」の台所のタイルと石畳。

大正末〜昭和初期に吉田山に造られた茶事のための旧点心席。現在、1階はカフェの厨房や待ち合いとして当時の姿を残している。「大正時代に登場したシンプルな白いタイルをいち早く取り入れたもの」

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究極のモダニズムを追求した 「本野精吾(もとのせいご)邸」の外壁。

モダニズム建築の先駆として活躍した、建築家・本野精吾の自邸は大正13年の竣工。「コンクリートブロックをむき出して外壁に使った画期的な作品。仕上げ用ではないため、表面に荒々しさが見られます」

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建築家によるデザインが凝縮する「栗原邸」の家具と照明。

本野精吾が自邸の5年後に手がけた住宅。「モダニズムを強く感じる自邸に比べ、随所に装飾的な要素が感じられます。本野自身による家具や照明などが当時のまま残されていて、見どころもたくさん」

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「京都府住宅供給公社堀川団地」の 町家から発展した新たなキッチン。

昭和26〜29年にかけ竣工した日本初のRC造店舗付き集合住宅。「公営住宅の標準設計が普及する前の建物のため独自のデザインに。とはいえ今に通じる機能性は、昭和20年代には新鮮に思えたのでは」

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木工作家のデザインを楽しむ、 「カトリック桂教会」の丸窓と障子。

家具デザイナーのジョージ・ナカシマによる、日本で唯一の建築作品。「住宅ではないが祭壇や照明、とりわけ障子をあしらった丸窓などは、人の暮らしに寄り添った木工作家ナカシマらしいディテール」

京都市京セラ美術館開館1周年記念展モダン建築の京都

会期 2021年9月25日〜12月26日
場所 京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ

寺社仏閣にとどまらず、明治〜昭和中期の貴重な「モダン建築」も数多い京都。その代表とも言える京都市京セラ美術館で行われる本展示は、近現代建築の模型や図面、家具など400点以上が並ぶ貴重な機会に。

photo, text & edit : Mako Yamato illustration : Junichi Koka


建築家、〈Space Clip一級建築士事務所〉 代表 岡田良子

住宅設計から町家修復まで手がけ、今後文化財になる戦後の建築に関心が高い。建築家のための『大喜書店』も運営。

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