河内タカの素顔の芸術家たち。
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ル・コルビュジエThis Month Artist: Le Corbusier / April 10, 2019
ル・コルビュジエが日本に唯一残した建物
近代建築三大巨匠の一人であるル・コルビュジエが手がけた日本で唯一の作品、そして2016年7月に正式に世界遺産に登録された建物が上野公園に建つ「国立西洋美術館本館」です。戦後の日仏間の国交回復と関係改善の象徴として建造されたこの美術館がなぜ世界遺産に登録されたかというのは、ル・コルビュジエという建築家がなにを行なった人だったかを理解する必要があります。
ル・コルビュジエ建築の大きな特徴の一つとされるのが、建物一階の壁を取り払い、箱のような形状の上階部分を柱で支えるという「ピロティ」でした。昔の西洋の建物は、斜め屋根を石やレンガの壁で支えられていたのに対し、ル・コルビュジエが提唱したのは、平らな屋根を鉄やコンクリートやガラスといった新素材で支えることで、室内においても自由な間取りを可能にするということでした。今でこそこの手の建築は当たり前になったものの、実はル・コルビュジエの発明が最初の第一歩だったわけです。そして、日本の近代建築運動においてまさにそのリアルなお手本としてこの美術館があったがゆえ、今現在、日本各地にこれと同じような公共建物があるのも、大まかにいえば彼の手法や思想を受け継ぎ発展させたものといえるのです。
さて、設計の依頼されたコルビュジエが日本を訪れたのが1955年11月、このときのコルビュジエの滞在日数はわずか8日間のみでした。建設予定地を視察し、その短い滞在にもかかわらず京都と奈良にも訪れています。その後、パリから送られてきた設計案には、本館のための設計に加え、講堂と図書館の入る付属棟、さらには劇場ホール棟を含む大規模なもので、それをもとに翌年3月には実施設計案が完成していたといいます。
上から見ると正方形の箱の形状をした建物は、各辺に7本のコンクリート打ち放しの円柱が建てられています。それが前述したピロティであり、コルビュジエの代表作として知られる「サヴォア邸」にも同じやり方が採用されていました。また、コルビュジエが“19世紀ホール”と名付けた一階中央部分は、天窓からの柔らかな自然光が入る吹き抜けのホールになっていて、二階部分の展示室が中央吹き抜けの回廊状の展示室になっているのは、もしも将来拡張が必要となったときに外へ外へと空間を拡張できるようにとの考えがあったからです。
さて、この美術館には開かずの部屋ならず“使われない階段”というのが数カ所に設置されているのですが、使われない理由はまさにその“細さ”にありました。観客たちが登り降りするには危険であるという判断で、過去にもほぼ使われたことがないのだそうです。それを知ると、さらにこの階段を一度でいいから昇ってみたいと衝動に駆られてしまうのですが、もちろんこの階段のみならずロダンの彫刻群が置かれた空間における光の取り入れ方や、常設室の回廊にしてもコルビュジエの特徴を感じられる特徴的な作りとなっています。ともかく、ここ日本にいながらル・コルビュジエが手がけたモダニズム建築を体感できる奇跡ともいっても大袈裟でないほどの建物、それが国立西洋美術館本館なのです。
<展覧会情報>
『国立西洋美術館開館60周年記念 ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代』
~2019年5月19日(日)
会場:国立西洋美術館
ル・コルビュジエが故郷のスイスを離れ、芸術の中心地パリで「ピュリスム(純粋主義)」の運動を推進した時代に焦点をあて、絵画、建築、都市計画、出版、インテリア・デザインなど多方面にわたった約10年間の活動を振り返る展示。
https://lecorbusier2019.jp