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気づけばいつも手に取ってしまう、ユニフォームのような色。 写真と文:宇多悠也 (〈ウティ〉デザイナー) #3May 23, 2025
僕のクローゼットには、ほぼ同じ服がサイズ違いや色違いで並んでいる。
ビンテージの服にしてもそう。気分で変えることはあっても、基本的には毎日のように同じような服を着ていたいので、自然と同じアイテムを複数枚集めてしまう。
なかでも手が伸びるのが、フランス海軍の服。資料としても、個人のワードローブとしても魅力的で、特に、1930〜40年代に存在したセーラートップは、自分のユニフォームのように頻繁に着ていた。インディゴのものは、気づくと手元にいくつも揃っていて、他の色や素材のものも多数持っているけれど、なぜかこのインディゴだけを毎回選んでしまう。
そんな背景もあって、〈ウティ〉ではこのセーラートップをベースに、さまざまな生地で長期にわたりモデルを展開してきた。

セーラートップと同じように、インディゴやブラックリネンのコート(ディーラーや古着関係の方には「ビヨード」として知られるコート)の様々な年代や色のものをよく着るので、今でもクローゼットやアトリエにはかなりの数がある。
これはその一部。素材感や色み、ディテールの違いがあって、見ていて面白い。

〈ウティ〉のコレクションでは毎シーズン、職人とともに生地や染めを開発している。
その中で、大切にしている色がある。それは、このコートにも見られる、プラスインディゴによる、限りなくブラックに近い濃淡のあるブルーだ。

これまで19シーズンにわたり、さまざまな素材に対して、手染めのインディゴや藍染、インディゴに炭を重ねるなど、多様なアプローチで、糸染め、生地染め、製品染めを行ってきた。
ここ数年は、インディゴに柿渋を重ね、鉄焙煎によって、限りなくブラックに近いブルー、いわゆる「ブラックインディゴ」を表現している。
できるだけ赤みに振らず、むしろ緑や黄に触れた色味が好みで、そこは職人と共有しながら染めのプロセスを組んでいる。
レザーも経年変化が美しくなるよう、白レザーを職人の手染めでインディゴ染めを施している。
デニムのような色落ちを目指して染め上げたものは、雨でも気にせず着続け、今ではいい感じに色落ちし、愛着がある一着だ。

また、友人のプロジェクトでも、どこかに必ずインディゴを糸染めや製品染めで取り入れ、「経年変化」をテーマに仕上げることが多い。
たとえば、目黒のレストラン『kabi』ではシャツに、八重洲の鰻店「はし本」ではエプロンに、兵庫・城崎の「OFF」では前掛けに、それぞれ異なる手法でインディゴ染めを施した。
岡山・倉敷のホテル「撚る屋」ではシャツとパンツを、現在制作中の京都の『エースホテル』ではトップスにオリジナルの糸染め生地を使用している。
自分が制作したユニフォームを着て働いているスタッフの姿を見るのは、いつも感慨深く、とても好きな仕事のひとつだ。そして、着ていくうちに色褪せたユニフォームを見ると、嬉しい気持ちになる。
時間をかけ、職人たちとの信頼を積み重ねて、当時のアイテムを再現することはできても、まったく同じものを二度と作ることはできない。
とはいえ、100年以上前からフランスで青く、黒く染められた洋服たちを見ていると、やはりロマンを感じる。
だからこそ、より近づけるように、これからも研究と追求を重ねていこうと思う。
edit : Sayuri Otobe
〈ウティ〉デザイナー 宇多悠也
