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若手デザイナーの登竜門「サローネ・サテリテ」。世界の家具の祭典、ミラノサローネだより。写真と文:浦江由美子 (ライター、コーディネーター) #2May 15, 2025
表現者にはどんな世界でも発表の場が必要だ。新星のように急にスターダムに乗り出す人は一握り。いま、有名と言われているデザイナーも長い下積み期間があったり、試行錯誤してやっと生業とすることができている。
ミラノサローネでは、学生や35歳以下の若きデザイナーが小さなブースで展示できる「サローネ・サテリテ」というプログラムがある。学園祭のような雰囲気で、新鮮な発想に出会えるので、私はこのセクションを見本市で一番楽しみにしている。
「サローネ・サテリテ」の出展者の中から最優秀賞4組が選ばれるアワードも今年で14回目。2025年のテーマは、「新しいクラフトマンシップ、新しい世界」。手仕事と工業製品の対立ではなく、バランスよく融合されるデザインを探る。
日本人も多く出展しており、ヨーロッパの方とは異なる発想やコンセプトのある素晴らしいデザインを紹介していて、頑張って!と応援したくなる。
東京のデザインスタジオ〈ネンド〉の佐藤オオキさんや、〈アンビエンテック〉のポータブルランプ「TURN」を発表した田村奈緒さんもここで展示した。
今年は130を超えるエントリーの中から、〈スーパーラット〉の長澤一樹さんが最優秀賞に選ばれた。長澤さんの作品は、ヤシ科の植物「棕櫚(シュロ)」の樹皮に、柿渋染めとリサイクリングした鉄で染めて照明や器にしたもの。
受賞される前、「シュロの樹皮はこんなに身近にあるものなのに、誰も見つけていない自然素材。それを見つけられた自分は本当にラッキーだ」と、長澤さんは話していた。全力投球している感じが素晴らしい。自分がやっていることを信じること、本当に心を洗われるような実直な取り組みをされている方が受賞したことを心より嬉しく思った。
大学での団体参加もあり、学生たちの考えたデザインがずらりと並ぶことが多い。私の住むベルリンのベルリン芸術大学の出展もあった。ソウル大学はテクノロジーを屈指したロボットの展示をしていて、アジアとヨーロッパとの違いを感じた。
小規模だったが、アフリカや中央アメリカ、イスラムなどの文化圏からの参加もあり、伝統的な手法ながらもコンテンポラリーなテイストにつながっているデザインは、どの国でも共通しているよう。若手デザインの万博、「サローネ・サテリテ」は若者の味方だ。

edit : Sayuri Otobe
ライター、コーディネーター 浦江由美子

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