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ハランの葉っぱで蒸し焼き。写真と文:按田 優子 (『按田餃子』 店主) #1October 10, 2025
みなさん、こんにちは!
今回の連載では、私が好きな「包む料理」を紹介したいと思います。
先日、私は島根・隠岐の島にある海士町を訪れました。人口2,200人ほどの小さな島で、海はとても穏やか。私が住んでいる神奈川・三浦半島も海のある町ですが、趣が随分と違います。砂浜がほとんどないからなのか!? 船が岸辺に近づくと、磯の香りよりも森の香りが立ち込める不思議なところです。
聞けば、島では珍しく淡水が湧くそうです。「名水百選」に選ばれるほどのおいしいお水。だから田んぼがそこかしこにあるのです。ちなみに、お隣の島には田んぼはありません。とても珍しい環境なのですね。

私がお世話になったのは、民泊『みやざきサービス』。ほぼ自給自足のもので日々の食卓が彩られます。もう~どれもこれも、ものすごくおいしい! 熱源はもちろん、醤油も、ゴマも、自家製でワクワクします!
お米や野菜が育って、魚や海藻が採れて、豊かな自然を前に、あるものを必要な分だけいただく、という生活リズムを想像すると、みやざきさん宅の子どもたちはこれからどんな力をつけて育っていくだろうと成長が楽しみです。
今回私が海士町を訪れたのには理由があります。宿主のみやざきさんから「食べつなぐ」をテーマに、お話会や料理講習の依頼を受けたのです。その一環で小学4年生向けに、「自炊の型を手に入れる」ための調理実習をしました。その日は給食を無しにして、自分たちで料理をしました。

以前から私は、自分が思う味を人生の早い段階で作れるようになったらどんなに強いことか! と思っていました。なぜって、どこにでも冒険に行けるし、挑戦したいことが遠くの土地や見知らぬ土地にあっても、自炊ができたら体調管理ができる。そしたら心身ともに健やかにいられて、自分の挑戦に集中できるからです。夢を実現するための第一歩が自炊というわけです。
私が小学生のみんなに覚えてもらいたいのは、「アレがないとコレができない」とならないような料理法。
そういうわけで、どこでも手に入る万能調理器具のひとつ、葉っぱが今回の主役です。みんなの家の裏庭に生えていそうな、ハランを使いました(ほかにも、ウコンや月桃、生姜、笹、芭蕉、いちじく、ハスなど包みやすい葉っぱはたくさんあります)。

魚は切り身でも、まるのままでもOK。軽く塩を振って、好みの野菜や香味野菜と合わせて包み、蒸し焼きに。それを鍋に入れて蒸してもいいし(水はちょっと入れれば大丈夫)、そのまま焼いても、中の魚はどのみち蒸し焼き状態です。そこが葉っぱのいいところ!
海士町の子どもたちが、葉っぱ調理の達人になってくれたら嬉しいなぁ。
ちなみに私は、仕事で何度も訪れたペルー・アマゾンで、バナナの葉に包んだ川魚の蒸し焼き「パタラシュカ」をよく食べていました、もちろん自炊です。市場で川魚を買い、パッと人数分作れるおいしい魚料理です。
内臓を取り除き、ニンニクと玉ねぎを刻み、レモン、塩、辛くない唐辛子を混ぜたもの(これらを一部とっておく)をお腹に詰めて、バナナの葉でクルクル巻いて炭火焼きにします。そして焼きあがった魚に、残りの具を生のままトッピング。
私はこれが大好物で、バナナの葉のほかに、生姜の仲間の葉っぱで包んで香りをつけて楽しみました。丸焦げになる心配もなく、誰でも簡単にできる葉っぱの蒸し焼き。
ぜひ皆さんも、身近な葉っぱで蒸し焼きを試してみてください!
『按田餃子』 店主 按田 優子
