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福岡とニューヨークをつなぐ「マンハッタン」。私の好きな福岡:1 写真と文:Yuki Matsuo (「All-You-Can-Eat Press」主宰) #1June 02, 2025
これから4回にわたって、「私の好きな福岡」について書いていこうと思う。

福岡で“マンハッタン”と言えばドーナツ、『リョーユーパン』の「マンハッタン」。
福岡に本社を構える、九州最大手の製パンメーカー『リョーユーパン』が、1974年の発売以来作り続けている菓子パンで、九州人のソウルフードとして老若男女に長く愛されてきた。
まだアルファベットも読めず、ニューヨークがどこにあるかさえも知らなかったあの頃から知っている「マンハッタン」は、もしかしたら私が初めてニューヨークと繋がったきっかけだったかもしれない。

「マンハッタン」は、チョコレートがまだらにかかったケーキドーナツと評されることが多いけれど、生地はドーナッツよりももっとざっくりした食感。どちらかと言えば、チュロスやビスケットに近い。
子どもの頃は牛乳が定番のペアリングだった。
今は、モーニングコーヒーと一緒に朝食に食べることが多い。暖かい季節になると、冷蔵庫でちょっと冷やしてから食べるのが“通”で、チョコレートのザクっとした食感をより楽しむことができる。

高校を卒業して東京で暮らすようになって、「マンハッタン」が全国区じゃないことを初めて知る。
*現在は、九州(沖縄を除く)、中国、四国、関西の一部のエリアで販売されている。
いつでも買えると思っていた「マンハッタン」が急に遠くなってしまい、それ以来九州へ帰省するたびに懐かしく口にするようになった。
そして、月日は流れ……。私は、マンハッタンのあるニューヨークに暮らすことになるのだ。
しかもドーナッツ好きが高じて、ニューヨークのドーナツマップを出版することに! それがきっかけで「All-You-Can-Eat Press」というリトルプレスまで立ち上げてしまった。
後に、マンハッタンで暮らす日が来るなんて露知らず、「マンハッタン」をかじっていた子どもの頃の私が一番驚いているんじゃないかと思う。
今は、東京からニューヨークを経由して、30年ぶりに九州での暮らしに戻ってきた。スーパーやコンビニのパンコーナーで「マンハッタン」を見つけると思わず手が伸びる。
当時と全く変わらないパッケージと味。私にとってのソウルフードだ。
昨年、「マンハッタン」は発売から50周年を迎えた。
その記念すべき年に、福岡を拠点にこだわりの服作りを続ける「FUJITO」と一緒に、オフィシャルグッズを作らせていただくという、まるで夢のようなコラボレーションが実現した。
プレートやマグカップ、バンダナ、Tシャツには、発売当初から変わらない「マンハッタン」のオリジナルロゴと、“地元の味”という意味で「TASTE OF HOME」のメーセージをプリント。
また、「マンハッタン」の歴史と魅力を徹底解説したZINEを自費制作。
勝手にファンを代表して、『リョーユーパン』への感謝状を渡したつもりだ。私たちのソウルフードがこれからもずっとずっとあり続けてくれますように!

2023年、念願だった「マンハッタン」のニューヨーク凱旋を果たす。マンハッタン島をバックに撮影した「マンハッタン」。
「All-You-Can-Eat Press」主宰 Yuki Matsuo
